修習中の起案,今回は刑事編です。
3 刑事裁判
(1)公判前整理手続問題
刑裁起案では,公判前整理手続段階を想定し,裁判官として検察官や弁護人にどのような釈明を求めるべきかであったり,検察官の証明予定事実記載書記載の各事実の意味合いや重要性についてどのように考えるか,また,類型証拠や主張関連証拠として弁護人が開示請求するものとしてどのようなものが考えられるか等が問われることがあります。
これらについてどのような対策をすればよいかは,私も確立できていたわけではありません。
他の班の人等からどのような問題が出たかの情報を入手し,少しずつ慣れていくしかない気もします。
証拠開示の問題については,実務修習中,特に検察修習中に捜査機関がどのような証拠を集めているかをしっかり見ておくことが肝要ではないかと思います。
これにより,証拠調べ請求されていないが捜査機関が管理しているはずのものはすぐに見当がつきます。
証明予定事実記載書の事実の意味合いや重要性については,間接事実の評価として検察起案でもやることでしょうし,刑裁の事実認定問でもやることなので,それほど困難ではないでしょう。
ただ,釈明問については苦手な人も一定数いると思います。
私が意識・配慮していたことは,(ア)推認力の弱い事実(動機に関わるものが一般的)は主張を維持するかどうか検討させる,すぐに撤回は求めない,(イ)あくまでも争点整理で心証を得る場ではないので,裁判所の方から詳しく事実を明らかにすることは求めない,です。
また,公判前の問題にとりかかる前に公判記録(つまり証拠)も全部読む人もいますが,私はこの段階では証拠は全く見ず,自分が裁判官になって手続を進めていくつもりで問題に取り組んでいました。
たしかに,公判記録にヒントがあるかもしれないと思ってやるのもありかもしれません。
しかし,公判前は裁判官は証拠の内容を何も知らずに,検察や弁護士・被告人の主張だけを資料としてそこに生じる疑問を解消しつつ進めていくものなので,先に証拠を見ると変に先入観が生まれてしまい,誤った回答をする危険もあるのではないでしょうか。
(2)事実認定問
67期の事実認定問は,すべて「10枚程度」と指定されており,要点を要領良く書くことが求められていました。
「10枚程度」とされているということは,10枚あれば十分書けるということなので,思いついたことを(だらだら)長く書くのは印象が良くないかもしれません(教官にもよるかと思いますが)。
刑裁起案は(というより全科目共通かもしれませんが),入れ込まずに淡々と書くことが肝要です。
何も難しいことを書く必要はありません。
ひとつずつ(ひとまとまりずつ)事実を認定し,素朴な評価をしていくだけです。
反対可能性を考慮したほうが点数が上がるとよく言われており,これはまぁ確かなことだと思いますが,無理に考えて冗長な起案になってしまうと逆効果になりかねないので,あくまでも自然にやっていくことがいいのではないかと思います。
事実認定対策として私がやっていたことは特にありません。
特に犯人性の問題なんかは,検察起案とやることは変わらないので(再間接事実という言葉は使わないくらい),検察起案対策をしっかりやることが刑裁起案の事実認定問対策になると思います。
(3)その他小問(保釈や手続法関係)
特に何か対策をしないといけないような問題は出ないと思います。
が,やったらプラスになるものがあり得るとすれば,公判前整理手続が関係する刑事訴訟法の重要判例(判例六法に載っているもので十分だと思います)をチェックすることくらいでしょうか。
もちろん,判例を知らなくても,公判前整理手続の趣旨から考えれば対応は可能です。
4 検察
(1)終局処分起案
ア 総論
検察起案は,白表紙の「終局処分起案の考え方」と,「講義案」の公訴事実例の読み込みに尽きます。
「終局処分起案の考え方」は特に重要で,その型を外したらアウトです。
私は,記録を読み始める前に,起案構成用紙に
『第1 公訴事実等
1 公訴事実
2 罪名及び罰条
3 求刑
第2 思考過程
1 犯人性
(1)間接事実
(2)直接証拠
(3)共犯者供述(ある場合のみ)
(4)A供述
2 犯罪の成否
(1)~罪
ア 客観
イ 主観
ウ 結論
(2)~罪
ア
イ
ウ
(3)共犯性(ある場合のみ)
ア 共同実行の事実
イ 共同実行の意思
(ア)犯意の相互認識
(イ)正犯意思
(4)他の犯罪の成否
3 情状
(1)不利
(2)有利』
と書いておき,記録を読みながら構成用紙の各パートに淡々と事実及び証拠を書き入れていました。
検察起案は分量が多く,記録をしっかり読めるのは1回限りの方が多いはずなので,あらかじめ自分に合ったやり方を確立しておいたほうがよいと思います。
イ 犯人性
私は,犯人性で構成用紙を1枚用意し,左右を2分割して,左に犯人・被害者・事件側の事情,右にA側の事情を,さらに上下方向5分割して,各項目ごとに分けていました。
私の分析結果では,検察起案は間接事実の引用の適切さが勝負の分かれ目で,間接事実の意味づけを長々書く必要はありません。
意味づけは長くて5行程度で十分です。
ウ 犯罪の成否
犯罪の成否で重要なことは,何よりも定義を正確に書くことです。
事実認定で長く書くために定義を端折ることはやめたほうがいいです。
理由付けはいらないので,判例の定義をそのまま書いてください。
その際,できるだけ条文の文言に引きつけてください。
検察起案は,「講義案」を参考に公訴事実を書かなければならない都合上,出題される犯罪も「講義案」の公訴事実例に記載されているものに限られるので(私は勝手にこう考えていましたし,間違ってもいないと思われます),覚えるべき定義の数は多くありません。
また,判例と異なる解釈論はNGですし,検察には独特(?)の考え方もあるので,随時覚えておきましょう。
例えば,刑法235条の「他人の財物」は,現在では「他人の所有する財物」と考える学説が通説化していると思います(他人が物を占有していることの要件は,「窃取」の解釈として出てくるというものです)。
しかし,検察起案では「他人の財物」とは「他人の占有する財物」です。
間違っても「他人の所有する財物」とは書かないように。
エ 情状
箇条書きで淡々と書くのみです。
(2)小問
検察起案には,小問が1つか2つ出題されます。
難しいものは出ませんし,最後にやると時間切れになってもったいないので,いちばん最初にやってしまうことを私はおすすめします。
小問対策として,白表紙で演習問題が配られていると思いますが,私は全く手をつけなかったですし,やらなくてもできます。
ただし,司法試験レベルの知識が完全に抜けている人は,刑事訴訟法の復習をやってもよいかもしれません。
5 刑事弁護
刑事弁護は,想定弁論ないし弁論要旨の起案が出題されていました。
刑事弁護のタブーは明白です。
「被告人の主張や供述に反する弁論を絶対にしてはならない」
「認定落ち等あっても,こちらからわざわざ有罪弁論をしない」
「争点整理の結果を絶対に無視しない」
まず,被告人の主張や供述に反する弁論は絶対にしないこと。
第三者が被告人に反する供述をしている場合において,仮にその者の供述を前提にしても犯罪が成立しないと主張できたとしても,被告人の供述に反している以上,その者の供述の信用性を肯定したり,信用性が認められることを暗黙の前提に弁論してはいけません。
「仮に」と書くことすら基本的にNGと言えると思います。
次に,こちらからわざわざ有罪弁論をしないこと。
例えば,共同正犯で起訴されているが被告人がこれを否定している場合,書くべき弁論は「共同正犯は成立しない」です。
「せいぜい幇助にとどまる」等絶対に書いてはいけません。
もっとも,被告人がそう認めている場合だけは別です。
最後に,争点整理の結果を絶対に無視しないこと。
弁論は,争点整理の結果に従って,争点ごとに書きましょう。
答案構成が最初からされていると思えば,こんなに楽なことはありません。
すなわち,刑弁起案の構成は,
『第1 総論
第2以下=争点整理の結果に従った争点ごと』
で確定です。
記述内容や証拠が重複する場合,「前記のとおり」「後記のとおり」でかまわないので,必ず争点ごとに書きましょう。