昨日の続きです。


これは、妄想小説ではなく、私の夢の中の話です。



★ ★


「私・・・・・・・人間じゃないの・・・・」


突然の別れを切り出され、僕の目の前から

消えた彼女を追いかけて

僕は南の島にある彼女の実家を訪ねていた。


自分の目の前から消えた彼女を

僕はどーしても失いたくなくて、

自分でもどうかしてる・・・・・とは思ったけれど、

ずうずうしくも、彼女の家へ上がり込み、

そして、彼女が何故、僕の目の前から消えたのか・・・・


その理由が知りたくてきたけど・・・・


意を決した様子で僕を見上げる彼女。


でも、その彼女が発した言葉は

僕が想定していた言葉ではなくて・・・。


僕の耳がおかしくなったのか??


頭の中は疑問符だらけだ。


「え・・・・・っと。人間じゃないって・・・・」


僕は立ち上がりかけた腰を、もう一度下ろし、

疑問を口にしてみる。


机を挟んで合い向かいになった彼女の顔を見ると

彼女は強いまなざしで僕を見た。


「・・・・・・・・・・・・・・人間じゃないって・・・・

 あの・・・・意味が良くわからないだけど・・・」


僕の言葉に、彼女が淡い笑みを浮かべた。


「・・・・・・・・言うつもりなかったの・・・・」


彼女が口を開く。


「私、何歳に見える?」


「えっ?・・・・・・・何歳って・・・・

 僕と同じくらいにしか見えないけど・・・」


「そうね。あなた達の目には、私はきっと

 あなたと同じくらいに見えると思う。

 でも、私はあなたと同じ時間の流れで生きてないから・・・」


おばあちゃん・・・・なんて言えない歳なのよ。


彼女が口にする言葉を、僕はボンヤリと聞いていた。


良くあるマンガのシチュエーション。

人間じゃない恋人と、人間のぼく・・・・。


『僕にずっと嘘をついていたんだ・・・・』と相手を責める事も


『寄るな、化け物・・・・』と罵る事も・・・・


まぁ、漫画の世界だったら良く見るけれど、

実際の所、まったく心の中に言葉が入ってこないものだから

ただ、ポカンと聞くしかない・・・って言う感じだった。


ほんとうに、間抜け面で・・・。

いや、多分、拍子抜けた顔で・・・・


まぁ、どちらにしても、心ここに非ずと言った表情を

浮かべていたのは間違いがないと思う。


好きで追いかけてきた彼女の別れの理由が

「人間じゃないから・・・・」って、

そんな理由、予想出来る人間なんて、いる訳ないよ。


僕は彼女の言葉に、何も返せないまま、

ただ、彼女を見ていた。


彼女は、そんな僕の顔を見ると、スッと瞳をそらすと、

深々と頭を下げた。


「・・・・・黙っていなくなってごめんね。

 私は、人間じゃないけど・・・・・

 それでも、あなたと一緒にいるのが

 楽しくて、ずっと言えなかった。

 言ったらきっと、最後になっちゃうと思ったから・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「私を追いかけてきてくれたのに、

 あなたが望む答えを返せなくて、ごめんなさい。


 電話でさよならって言ったのは、

 あなたに伝える勇気がなかったから。

 嫌われたくなかったし・・・・・。だから、卑怯だと思ったけど、

 電話で言ってお終いにしようと思ったの・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


僕は彼女の独白を聞いていたけれど、

何も返す言葉が見つからなかった。


そこには、嫌悪感も、恐怖感もなかったけれど

ただ、何も考えられない・・・・


まったく情けない話だけど、ほんとうに

ただ、目の前の彼女を見てるだけしか、

その時の僕には、出来なかったんだ。


「〇〇さん。ここまで来てくれて、本当にありがとう。

 私・・・・・・最後にちゃんと伝えられて、良かった。」


「・・・・・・・最後?」


彼女の言葉に、僕は初めて答えを返せた。


「・・・・・・・・・・・・・・・次の船が来たら、早く本土に帰って。」


「・・・・最後って、一体なんのこと?」


僕は、彼女の言葉が気になった。

人間がどーとかゆー言葉は、

なんだかボンヤリしてしまったけれど、

最後という言葉の響きだけは、理解出来たから。


「・・・・・・・・・・・・・・」


僕の問いかけに、今度は彼女が黙り込む。


「・・・・最後って、一体どういう事だよ。何を隠してるの?教えて」


僕は俯いた彼女に、ちょっと強い口調で問いかけた。

彼女が人間じゃないとか何だかとか、

この時は、もうどうでも良いというか、頭からその事は

追い払ったというか・・・・・・。


とにかく、その事は僕の頭の中からは消えていた。


「・・・・・・・来るの・・・」


「何が?」


「・・・・・・・・・・嵐が・・・・」


「えっ?・・・・・・嵐が来るって・・・・・台風?」


沖縄付近では、毎年の様に台風の通過が

天気番組に出ている。


南の島だから?

いや、でも、台風だからって、最後って事はないだろ?

意味が分かんないよ。


僕は


「何が来るの?台風?・・・・なんで、それが〇〇〇が最後だって

 関係があるの?」


強い口調で問いただす。

ここは確かに島だし、台風が直撃ってなったら、

さすがに凄い事になりそうなのは分かるけど・・・・・

だからって・・・・・・・


僕の頭の中を読んだ様に彼女は首を横に振って


「・・・・・400年に1度の嵐が来るの・・・・・。

 このことは、前から分かっていたし、私も覚悟してたから・・・」


「よっ・・・・・400年???」


4年に1度なら分かるけど、400年って??


「嵐は大きいの。そのままだと、多くの人が傷ついてしまう。

 だから、私がその嵐を受けて、弱める。これが役目。」


「嵐を弱めるって・・・・。どうやって・・・・」


それはナイショ・・・・。彼女は小さくつぶやいた。


「私はこの社の代々の宮司達に守られてきた。

 本当に良くしてくれたの。だけど、あるときふと、外の世界へ

 行ってみたくなった。

 だって、ずっとここにいたから・・・・。

 

 外の世界って、どういうんだろう・・・って思い願っていたら

 私の魂(心)が、自由に動ける様になって、

 気が付いたら、こういう姿もとれる様になってた。


 びっくりしたけど、嬉しくて・・・。

 私の姿を見た宮司達は、私が彼らの守っていたものだと

 理解するまでは時間がかかったみたいだけど、

 でも、大事にしてくれて、自由に動いても許してくれてたの。


 外の世界・・・・この島の外へ出てみようと思ったのは

 嵐が今年来るってわかったから・・・・。

 最後に、もっと大きな世界に行ってみたいとおもって・・・・

 島を離れたの。期限付きで・・・・」


ちょっとだけズルしちゃった・・・・・。と言って笑う彼女。


「・・・・・・・・・・・・」


僕は彼女の話をただ聞くだけ。

なんだか信じられない話だったから、言葉も返せない。

でも、

「やっぱり可愛いな・・・」なんて、間抜けな事を考える僕。


彼女は僕の気持ちが分かっているのか、

僕の返答を待つわけでもなく、一人話を続ける。


「でも、予想より早く嵐が来そうで・・・・。

 呼び戻された。

 〇〇さんと・・・・・・ずっと一緒にいたいと思ったのは

 本当だけど・・・・私は、役目を捨てる事は出来ない。

 だから・・・・・・・・・・・・・黙って戻ってきたの。

 ごめんなさい・・・・・」


本当は、彼女はもっと何かを話をしてくれたみたいだったけれど、

僕が覚えているのは、これだけだった。


「だから、〇〇さん。次の便で、早く帰って・・・・・

 危ないから・・・巻き込まれない為に・・・・」


彼女はそう言って、ポトリと一つ涙を落とした。


僕は彼女の涙を、やっぱりぼんやりと見ながら

何を言えば・・・・と考えていると、


「・・・・・・・・・・・・・・〇〇〇様、嵐が来ました!」


大きな襖をパタンと大きな音を立てて開いた、

この社の宮司らしき人物が


「えっ・・・・・。そんな、もう。だって、まだ時間じゃ・・・・」


「えっ?えっ?なに?何なんだ??」


「〇〇さん・・・・・・早く逃げて・・・・

 私が守っていられるうちに・・・・早く・・・・・・・」


彼女はそうつぶやくと、すぅっと影が薄くなり

引っ張られる様に、開いた襖の奥へと姿が消えていく。


「〇〇〇!!」


僕は消えてゆく彼女を慌てて追いかけると、

一瞬、彼女の瞳は僕の顔を捉え


「早く・・・・・」と口を形どって、すぅっと消えて行った。


僕は、彼女が消えた場所に立ち、見上げる。


底には、しめ縄と飾りのついた大きな老齢な木が

社の真ん中に鎮座していた。


「もしかして・・・・・・・」


僕が目の前の木を見上げると、

もの凄い風の塊が襲いかかっていた。


普通の風とは何か違う・・・・でも、何が違うのか分からない。

まとわりつく様な風に、僕は翻弄されそうになる。


すると・・・


サワサワサワと、目の前の大きな木の枝が

風を遮る様に、僕の体の周りに枝を下した。


『早く・・・・・』


木に、彼女の顔が浮かび上がる。


「〇〇〇・・・・・・・」


僕はその木から目が離せなくなって、

風が頬を強く打ちつけても

その木を見上げたまま動かなかった。


そして・・・・・



その後の事は良く覚えていない。


ただ、僕はその木に寄り添う様に横たわっていて、

気が付いたら嵐は止んでいた。


空は晴れ渡り、先ほどの嵐が嘘の様だ。


目の前の社には、無数の亀裂が見え、

美しかった庭園も荒れ果てた様を見せていた。


僕が寄り掛かっていた大木にも、無数の亀裂が走り、

幹が裂けているのが見えた。


僕はそっと、その裂け目に手を当てる。


僕はその時、すでに理解していた。


この木こそ・・・・いや、この神木こそ、彼女だったのだと。


僕を嵐で気づ付けまいと、木は僕を守っていてくれた。


僕は込み上げる感情に、眼鏡の奥の目に涙が浮かんだ。


男が泣くのはみっともない・・・と言われたけれど、

何故か、無性に泣きたくてたまらなくなった。


★ ★


どの位そこに座っていたのか分からないけれど、


ふと気が付くと、僕の前に白装束を来た年老いた男性が

僕を見て笑っていた。


「君のお陰だ・・・・本当にありがとう・・・・」


彼の言っている事が分からず、僕は彼の顔を見つめると


「今回の嵐は、我々が思っている以上に大きく、

 そして予想外に早く来てしまった。

 それこそ、守りを固める前にね。

 

 このままだと、われらの島が代々行ってきた、

 本島の守りを為し得ぬままで終わる所だった。


 だが、御神木様と、君のお陰で何とか難を逃れる事が出来たよ。

 ・・・・・・・ありがとう」


僕は礼を言われる覚えはなかった。全くと言っていいほど。


ただ、嵐が襲ってきている間、


僕はずっと、彼女の事を考えていた。


彼女は人間ではないから・・・・と、

僕から離れる事を決意したと言ったけれど、

それが一体何の問題があるんだろう・・・・という事だ。


普通考え見れば、何事もなかったかの様に

忘れてしまえばいいけれど、

僕にはそれが出来ないな・・・と思っていた。


だから、僕は嵐の中で決めていた。


ずっと、彼女の側にいて、彼女を見守っていこうと・・・・。


嵐が過ぎる間に何があったのかは、本当に良く覚えていない。


ただ、記憶のどこかで、嬉しそうに微笑む彼女の姿だけが

脳裏に横切った事だけは覚えていた。


別れの意味を確認して、ただ彼女に会いたいだけだった僕は、

この日、この後の僕の一生を左右する、重大な決意を口にした。


「僕をこのお社においてもらえませんか・・・・」


★ ★ ★


「で、宮司さんは結婚しなかったの?」


竹ぼうきを止めたまま、目の前の子供に

僕は笑って答えた。


「僕は、もう、決めた彼女がいるかね。結婚という形をとらなくても

 ずっと側にいられるから幸せなんだよ」


「・・・・・う~ん。すごくプラトニックな感じですね。」


「はははっ・・・・・でも、彼女以外の人には興味なかったし、

 結局、この島に残って、この社で生活する様になってから

 人との接触はあまりなかったから、

 他に目が行く事がなかったのかもね。」


「凄く勿体ない感じがしますけど・・・・」


「うん・・・・・そう?でも、僕にはこれが一番幸せなんだ」


あれから30年近く経って、僕も立派な中年男性になっていた。


嵐の後、僕を褒め称える島の人々の好意に甘え、

僕は学校をやめて、この島の人間になった。


当然、家族は僕の行動に反対はしたけれど、

僕はそうしなければならないと、断固として考えを曲げなかった。


彼女は今も僕が守る社の中央に鎮座している。


時折、その大木に彼女の姿が幻となって浮かんで消える。


その顔はいつも笑顔だ。


僕は、それだけで十分だった。


いつか僕はこの世界から消えてなくなる。

肉体はいつか朽ち果てて、土に返る。


その後、彼女の側にいられるかなんてわからない。

何しろ、僕はただの人間で、神である彼女と同じ世界に

いられるのは、この島だからだと、なんとなくわかっていたから。


だから、今いるうちは、命一杯、楽しんで、大切にしようと思った。

いつか別れが来て、

その姿が見えなくなる時が来たときに、

後悔をしない様に。


それに、僕には、次の「宮司」に彼女を渡す、

大切な役目があるからね。


僕は空を仰ぎ見る。

雲一つない青空が広がっている。


とても満ち足りた、凄く気持ちが良い日だな・・・と、

眩しく浮かぶ太陽を細く仰ぎ見た・・・・。


★ ★ ★ ★


・・・・・・つー夢です。


物語調ですが、実際、この様な夢をみとりました。


僕の顔は温和です。最後はおじさんになってました。


彼女の名前は三文字です。

目が覚めて暫くは覚えていたし、後でなんか関連のある

言葉が出てくるかも・・・と思いながら、


「こんな夢を見たんですよ~」と、繰り返しつぶやいていたのに、


夜になる頃には、すっかり忘れてしまいました。


ほんと、なんで、書いておかなかったんだか・・・。


馬鹿だよなぁ~。残念。


だって、社というか、神社にもちゃんと名前があって、

私はその神社の名前を何度も口にしていたのに、

気が付くと、神社の名前も忘れてしまっていました。


この夢を見たのが、バリ島出張中の事。


バリには、バリの沢山の神様がいるのに、

私は日本っぽい神様の夢をみるなんて・・・・と、

面白がってました。


だって、結構、良い夢っぽかったから。


彼女は可愛くて・・・と僕は行っていましたが、

たしかに和服の似合いそうな綺麗な女性でしたが、

それよりなにより、綺麗な黒髪が凄く印象的で、

木に吸い込まれていくところなんか、

ほんと、映画みたいでした。



結局、この「僕」が彼女と一緒にした事が何だったのか

分からず終いでしたが、ただ、彼女を思う「僕」の気持ちが

なんらか作用した様には感じました。


まぁ、夢なので、設定や、時代背景がめっちゃくちゃなのは

おいといて・・・という事になりますが。


日本に戻り、400年に1度というキーワードで検索すると、

4年に1度の閏年のほかに、400年に1度という、

強烈な閏年があるということを知りました。


いやいや、ほんと、初めてですよ。

そもそも、閏年は4年に1回しかないんだから、

日常生活で考えることなんて全くないのですが、


今回の夢を見た後、検索してみて、

なんだか少しだけ興味を持ちました。


私の夢は、結構映画みたく話になっている事が多いので、

何だか1本の映画を見ているみたいでしたが、


自分は結構ロマンチストなのかも?なんて、

照れてしまいます。・・・・冗談だけど・・・。


この話が1週間近く経った今でも、結構鮮明に覚えているので、

今回ブログにしてみましたが、


他にも面白い変わった夢は結構見るので、

また何か機会があったら、別の夢の話も書くかも・・・・。


まぁ、お暇なら、読んでねってことで。


お粗末様でした。