業界女子のガチ花見の本気度
人間、忙しいときほど「遊び」を欲する。それはもう、狂ったように本気で遊びたくなる。
というわけで、締め切りに追われる出版業界女子の「お遊びの誘い」は「そんな日程、とても無理ぃ~!」とかブーブー言いながら、どんどん参加メンバーが増えていく。特に桜の花見会は期間が限られているので、参加者のガチ度合いが違う。
私の周辺で招集されるのは、フード系スタイリストとかカメラマン、グルメ系、旅行系のライターなど「食いしん坊」が多い。この系統の花見会は毎年、デパートの開店時刻5分前に集合するところから始まるのが恒例なのだが、
「今年のテーマはエスニックで」とか
「総員を前菜、メイン、デザート、飲み物の4班に分けて配置」とか、
「場所とり班は別行動。8畳大のブルーシートを持って現地集合。シートの下に敷く古新聞を忘れるな」とか、
仕事以上に緻密なダンドリが組まれ、指示が飛んでいく。
で、10時、デパ地下の開店とともに総員が配置につき、人数分の「ご馳走」を確保していく。あとでレシートを集めて割り勘にするのだが、予算は1人5000円程度。このときの選び方が悪いと、仕事上のセンスも疑われるとあって、みんな真剣そのものだ。特に、桜の時期の限定スイーツや、期間限定メニューは絶対に外さない。テーマに合った酒選びも重要任務だ。
私は下戸なので、毎年ほとんど「暖かい飲み物」の担当だ。我が家最大(2.5L)のステンレスポットを持って、スタバに熱々のコーヒーを買いに行く。テーマが和食のときは、家からほうじ茶を持参することもある(←電車の中でバカほど重い)。でも、これがないと下戸の花見はひたすら寒いからしょうがない。
買い出しが終わっても、それは「始まり」にしか過ぎない。
まずはフードスタイリスト軍団の出番。まな板や包丁をしっかり準備してきていて、料理を食べやすい大きさに切ったり、大皿に美しく盛り付けたりといった作業が始まる。「そんなもの、どこに売ってるの?」と、最初は驚いたが、プラ製の使い捨てワインゴブレットなども調達してきている。
カメラマンは食べ物のスタンバイが終わったところからバンバン写真をとっていく。準備ができたら桜をバックに記念撮影だ。
この花見、午前中から始まるのだが、開催時間は長い。誰かしらが「打ち合わせが1件あるので、あとでまた」とか、「このメール送っちゃうので、ちょっとごめんね」とか、「途中ヌケ」する人間が多いからだ。「夕方なら行けるから待ってて!」と、後から来る子も多い。
別に男子禁制ではないのだが、いつも女ばっかり。もともと女性誌業界に男性は少ないし、誘っても怖がって近づかないのだろう。
最近はソメイヨシノが3月の業界繁忙期に咲ききってしまうことが多いので、少しずらして八重桜の時期を狙うこともある。そのほうが周囲に人が少ないのも好都合だ。ひととき、都会の喧騒も、しめきりのプレッシャーも、編集長のお小言も忘れて、桜吹雪に身をまかせる。
散会後は近くの火鍋中華屋などで体を温めつつ打ち上げを。それはそれで、また楽しい。仕事で有能な人間って、遊びは仕事以上に貪欲なんだとつくづく感心する。
↓八重の花見もゴージャスで良き