タイムカプセル(2003年)の旅
仏語圏カナダの街歩き Vol.2
FRENCH CUISINE
カナダの“食”はモントリオールにあり
最近、北米の美食誌などで「新・ケベコワ(ケベック人、ケベック風の意)料理」と呼ばれるようになったモントリオール・フレンチ。正統派仏料理の遣伝子を持ちながら、移民とともに入ってくるエスニック素材を躊躇なく取入れていくのがひとつの特徴だ。
モントリオールの科理を語るとき、必ず名前が挙がるのが「レストラン・トケ」。シェフのノーマン・ラブライズはカナダで最も尊敬される料理人のひとりだ。彼も、醤油やみりんなど、和の素材使いに定評がある。
電話すると、「今、市場に行っています」とのこと。この店、シェフ自身が選んだ“今日の食材”いかんで、メニューがどんどん変わっていく。新作のー品でも、仕入れの都合でー週間も続かないことがあるという。
「市場では極上のものだけを買ってくる。買い物リストは作らない。手に入った食材を組み合わせて料理するから、決まったレシピはない。料理というのは一瞬のインスピレーションだから」とシェフは語る。
彼の料理の特徴は一皿の中にさまざまな要素があること。この夜、前菜として出された「姫ホタテのイモセロリとエストラゴン添え、青りんごのムースを添えて、ギリシャ風」は、その真骨頂といえるかもしれない。ホタテの甘みとリンゴの酸味、ムースのトロリ感とイモセロリのシャキシャキ感。ほんのひと口の料理だが、食感のドラマチックな変化が楽しめる。
↓「レストラン・トケ」のサイト(料理写真は一見の価値あり)
http://restaurant-toque.com/en
※2008年の再訪時には、店が移転・規模拡張。やや敷居が高くなった感はあるが、提供される料理の質は流石だった。
一方、3年前旧市街の一角にレストランを開いたローマン・ゴッドブーも注目されるシェフの1人だ。イタリアンやタイ料理のシェフ経験もあるという彼が饗する料理は、そのフォルムが非常に造形的。新しい皿が運ばれるたび、あちこちのテーブルで歓声があがる。彼のレバートリーにも春巻きやレモングラスなど、東洋的な素材が顔をのぞかせる。
↓ローマン・ゴッドブーのプロモ動画。造形美が伝わる
https://www.youtube.com/watch?v=ax2KYfSzfLk
※2008年の再訪時には、支店もでき、規模が拡張。ランチだったので、リーズナブルなコースが楽しめた。ゴッドブー自身はテーブルを回らず。
(次回:古き良きフランスの街並みを歩く――ケベックシティ)
<『GRAN』2003年7-8月合併号より執筆部分を抜粋>
このシリーズは雑誌本体がなくなったり、取材先の再承認を受ける必要のない過去の執筆原稿を、著者本人の忘備録として転載しています。
画像は本人撮影分もしくはフリー素材で、雑誌掲載時に使われたものではありません。
情報は掲載当時のもので、現在は変更になっているものが多いかと思われます。
現状と違うと確認ができた部分は削除しています。