Power of the Destiny -48ページ目

第7話 悪夢のような…(3/3)

巫女は少し苦しそうに何度か深く呼吸をして、何かを見つめるように遠くに視線をやった。
「…その時、何か得体の知れない非常に邪悪な気配が、私たちを取り囲んだのがわかりました。
ここにいてはいけない。誰もがそう思いました。いえ、きっと思ったはずです。
私たちは皆、今出てきたばかりの森へ全速力で戻りました。
邪悪な気配は私たちを追ってきます。すると…。
ああっっ!!!」
巫女は顔を手で覆った。体が震え始める。
アオリは驚いて巫女の肩に「無理はしないで。」と手をそっと置いた。
震えながらも巫女はかぶりを振って、再び話し出す。

「私の後ろで悲鳴があがったかと思うと、何人かが炎に巻かれているのが見えました。
悲鳴はさらにあがり、姿の見えない何者かに私たちはなすすべもありませんでした。
私も走りながら炎に巻かれ、目の前が赤く燃え上がるのを見ました。もう、終わりだと思ったとき、遠くに青い龍が現れたのを見て意識が途絶えました…。

…どうやって戻ってきたのかわかりません。
…船に乗った記憶さえないのです。」

巫女は肩を震わせながらかすれた声で話きり、顔を覆ったまま泣きつづけた。
その背中を優しく撫でながらアオリは彼女が泣き止むのを待った。

しばらくして、巫女はまだ、大粒の涙をボロボロとこぼしながら真っ赤に充血した目でアオリを見つめた。

「そうだったのね。辛かったわね…。かわいそうに…。」


そう言って、アオリも目頭を押さえる。
それ以上何も言えなかった。彼女たちを危険な目に合わせた何かに、そして自分に無性に腹が立った。

「あなたの体には、龍のうろこがついていたわ。きっと、聖正蒼があなたを助けてくれたのね。
…ルウが船から飛び立つ青い光を見たと言うし、ここまであなたを運んでくれたのもきっと聖正蒼(しょうせいおう)ね。」

そっと巫女の体を抱き寄せると、アオリも涙を流していた。
全てを話して安心したのか、巫女はアオリの腕の中で気を失っていた。
彼女をそっとベッドに戻して、アオリは廊下に出た。
廊下では、いつの間にかルウが待機している。
ルウの沈痛なまなざしを受けながらアオリは涙を拭った。


「ルウ、本当に悔しいわ。きっと彼女以外の者たちは皆……。
…何が起ころうとしているのかわからないけど、こんなこと二度とあってはいけない。
とうとう魔法陣は完成したわ!命を落とした彼女たちのためにも、今度は私が彼女たちに答える番ね。
私は必ず救世主を呼び出します!!」

まだ涙の残る目元には、強い輝きが宿っている。
ルウはそんなアオリを誇らしげに見つめ、
「私は全力でアオリ様をお助けします。」
そう固く誓うのだった。
アオリもルウを振り返り、力強く微笑んだ。


「頼りにしています。一緒に頑張りましょう。」