Power of the Destiny -45ページ目

第8話 召喚(1/3)

風の神殿の最上階、天が仰げる祭壇の上には、直径5メートルほどの空間転送の魔法陣が描かれている。
聖正蒼(しょうせいおう)の血で描かれた魔法陣の文字はうす青く光り、厳かで神秘的な空間を作り出していた。
魔法陣の周りでは12人の巫女たちがアオリに向かって力を送っており、その中央で神官長アオリは、もうすでに7時間もの長い時間召喚の呪文を唱え続けていた。
額にうっすらと汗を浮かべ、目を閉じ、美しい唇からは音楽のようにも聞こえる言葉を発している。
魔法陣からの青白い光を受けて浮かび上がる輪郭は、幻想的で美しかった。
魔法陣の上の晴れ渡った空には、七色に光る空間が現れ渦を巻いている。
七色の光…時空を越える空間。異次元につながった証だ。


「もう少し、もう少しで見つかる。空の力の波動を感じる…。
ヒュウ、お願い答えて…。」


心の中でつぶやいて、アオリは天空を仰いだ。


東京・都立輝峡(ききょう)高校。三時間目の授業が終わり、休み時間になっていた。


「彪(ヒュウ)ー!今日の夕飯の買い出し、兄貴の当番だからね!よろしく!!」


廊下から、二年C組の教室に向かって煽(アオリ)が叫んだ。
それを聞いた生徒たちが彼を見てクスクス笑っている。


「何だよ。声がでかいんでよ。まったく…。恥ずかしい女だなぁ。」


ブツブツと小声で文句を言うと、顔を赤らめた彪が、となりのD組に消えた煽がいたあたりをちらりと睨んだ。
教室の中では、まだひそひそと彪のことを話している女子生徒もいたが、彪は聞こえないふりをして自分の席に戻った。
隣の席の前田隆志が、にやりと笑って話し掛ける。


「よお、沢村。煽ちゃん、元気でかわいいよな。俺、彼氏に立候補しちゃおうかなー。
ま、お前が兄貴になるのは考えもんだけどなぁ。」


彪は前田に一瞥くれて、フンと鼻を鳴らした。


「俺だってお前みたいな弟なんかいらねぇよ。
それよりも、あんなうるさい女のどこがいいんだか。
うるせぇしすぐ手は出るし、もう最悪だぜ。
ありえねえよ。」


と、少し口を尖らせてみる。それから二人はちらりと目を合わせると、声を上げて笑った。

次の授業の予鈴が鳴り、うるさかった教室はひそひそと話す声しか聞こえなくなった。
4時間目は数学だ。担当の杉村は、体育会系のめちゃくちゃ恐い先生だ。
数学教師のくせに、筋トレを欠かさずやっており、体格がとても良かった。
自分が応援してるJリーグのチームが負けた翌日は、非常に不機嫌で(近くに寄らないで下さい)と張り紙がしてある猛獣のように、怒らせると大暴れするのであった。
なので、皆まじめに教科書を出して、おとなしく自分の席についている。
彪も自分の席で教科書をきちんと出してはいたが、なんとなくぼーっと窓の外を眺めていた。
四時間目の授業なので、少しお腹もすいてきている。いつもより落ち着かない感じがするのは気のせいだろうか。
まあ、杉村の授業じゃ落ち着けというほうが無理な話だが。


「腹減ったなぁー…。」とぼんやり考えていると、かすかに耳鳴りがしてきた。
彪(ヒュウ)は唾を飲み込んで、咳払いをした。
耳鳴りは徐々に大きくなってくる。彪はさらに耳をこすってみたが、良くなる気配はない。
それどころかますます大きくなってきて、頭も痛くなってきた。
もう生徒たちの話す声も聞こえないくらいだ。
何なんだこれは、と朦朧としてきた頭でふと外を見ると、七色の光が見えたような気がした。