第9話 召喚(2/3)
「…ウ。……ヒュ…ウ…。」
頭の奥で声が聞こえる。自分を呼ぶような声だ。
「く…、うっ。」
彪は耳を押さえたままうめいた。
目の前が白くぼやけ始め、気が遠のく感覚に襲われる。
何か強い力で体が引き伸ばされるような気がして、彪はそのまま気を失った。
その時にはすでに、彪の体は教室から掻き消えていた。
気を失った彪の体は、七色に輝く空間の渦の中をゆっくり回転しながら移動していった。
「見つけた!!空の力の波動をキャッチしたわ。」
アオリは呪文を唱える声をさらに大きくして、天空の渦の中心を見つめた。
その時、12人の巫女の一人が急にうなだれて、アオリに送られる力の均衡が崩れた。
他の11人の巫女は、突然巻き起こった力の波動で吹き飛ばされ、
行き場を失った風の力は、アオリをも魔法陣の外へと弾き飛ばした。
側に控えていたルウが、壁に激突する前にアオリを受け止め、そのまま床に転がる。
「アオリ様、大丈夫ですか!?どこかお怪我はありませんか?」
ルウの上で、アオリは軽く頭を振ると、すっくと立ち上がった。
「ありがとう、ルウ。私は、大丈夫。ただ…。」
不安そうに魔法陣を見つめると、魔法陣の外でうなだれたままの巫女にそっと近づく。
後ろからルウがすぐに駆け寄った。
「アオリ様、不用意に近づいては危険です!お下がりください!!」
アオリはゆっくり首を横に振った。うなだれている巫女は、すでにこと切れていた。
彼女の額には呪いの呪文が浮かび上がっており、苦悶の表情を浮かべたままだった。
「ひどい…。呪いをかけられていたのね…。辛かったでしょう。頑張ってくれてありがとう…。」
アオリは涙を浮かべた。呪いを受けながらの苦痛に耐え、ここまで何も言わずただひたすら、アオリに力を送り続けてくれたのだ。
誰がこんなひどいことを…いや、あえて考えないようにしているだけなのか。
アオリの心は再び憤りで震えた。
しかし、悲しんでいる時間はなかった。呪文が途中で妨げられてしまったため、ヒュウを風の神殿まで転送することができなかったのだ。
ただ前と違うのは、確実に空の力を感じるということだった。この世界にヒュウは転送されてきている。
「どこに転送されたのか…。
人間界での記憶は封じてあるのだけど、知らない世界に来てきっと不安だと思うわ。」