第12話 道(2/2)
ヒュウは少年の家にいた。
石造りの家の中には、やはり石の暖炉があり、その上では暖かなシチューの鍋が、いい匂いをさせている。
鍋の傍らには、かっぷくのいい老人がおり、ヒュウのほうを優しく見ていた。
「何か、俺、何でここにいるのかわからなくて…。自分の名前以外は何も思い出せないんです。
ここがどこだかわからないし、自分がどこから来たのかも全くわからなくて…。」
ヒュウは頭を振って額に手を当てた。老人がゆっくりと口を開く。
「ここは、サラウント国とセンカーン国の国境の街コリアダムじゃよ。
まあ、そう焦ることはない。こんな家でよければゆっくりしていきなされ。
じじいと二人であの子も退屈しとったようじゃからの。」
白い髭だらけの顔をくしゃくしゃにして微笑むと、少年の方を見た。
少年は奥からおずおずと顔を出すと、決まり悪そうにもじもじと腕を後ろに回した。
「あー、あのー。俺、ラシアルって言うんだ。さっきは、そのー…悪かったな。
…俺、記憶がないなんて知らなくてさ。」
ラシアルはうつむき加減でもそもそと謝った。ヒュウはラシアルを見ると、ふと顔をゆるませた。
「いや、こっちこそありがとう。
ラシアルに会えなかったら、きっと今も街をさまよって、腹を減らして倒れてたよ。」
ラシアルは決まり悪そうにヘヘヘと笑うと、ヒュウの隣に腰掛けた。
ヒュウはいい匂いのする鍋に視線を移すと、お腹がぐうっと鳴った。
そして、ヒュウも決まり悪そうに首をすくめて笑う。
「ほっ、ほっ、ほっ。
さあさあ、シチューが出来上がったようじゃ。たくさん食べなさい。」
ポテトベースのスープに鶏肉とたくさんのキノコが入った、アツアツのシチューだ。
ヒュウとラシアルは無言でガツガツとシチューをほおばった。