源之助はゆったりとした気分で、葉巻をくゆらせている。
一仕事終えた後のように、充足感にどっぷりと浸かっている。
「あなた、橘家さんからお電話です」
奥方のどこか険のある声が、廊下から聞こえる。
喘息持ちの奥方には、葉巻の煙は厳禁だ。
「みねから、だと?」
自宅への電話など初めてのことだ。何か良からぬことかと気が急く。
「どうした?」
「申し訳ございません」
「うん、よろしくない」
奥方が聞き耳を立てているであろうことを意識しての受け答えだ。
「申し訳ございません」
「うん、よろしくない」
奥方が聞き耳を立てているであろうことを意識しての受け答えだ。
「実は、正三坊ちゃまがお見えになっております」
「正三が? 皆で騒いでいるのか?」
「いいえ! お一人でございます。
何だかお疲れのようで、『酒!』とひと言なんでこざいます」
尋常ではない正三の現れ方に、一抹の不安を覚える女将だった。
まさかの事態に備えておかねば、そんな思いを抱かせる正三だった。
青白い顔は、正三の札の顔色ではある。
まさかの事態に備えておかねば、そんな思いを抱かせる正三だった。
青白い顔は、正三の札の顔色ではある。
連れだって来る取り巻き連とは異質の、やはり育ちの良さを感じさせる透き通るような、軽く触れただけで赤い血管が浮き出そうな薄皮に見える。