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【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

 一点を見つめる源之助、苦渋に満ちた表情の源之助、初めて見る叔父の生の姿だった。
 
「いいか、正三。男は、仕事で名を成さねばならん。
そして名誉ある地位に就かねばならん。
由緒ある佐伯家の跡取として、恥じぬ地位にな。
その為にも、嫁は厳選せねばならん。
心配はいらん、私が見つけてやる」

やっと正三に、話が見えてきた。
“小夜子さんのことか? お父さんから話が来たんだな。
冗談じゃない! 僕の伴侶は、小夜子さん以外にはありえない”
しかし父にはおろか、この叔父には逆らえない。
現時点において、いやこれからの正三の人生において、小夜子を妻として迎え入れることと同様に、絶対に外せないことなのだ。

今この時期に叔父と決別すれば、出世はおろか逓信省に残ることすら難しくなる。
叔父に言われるまでもなく、佐伯家の名誉のためにも出世をせねばならない。
なんとしても、どんな手段を使っても、次官に上り詰めなければならないのだ。
それは、佐伯家だけでなく正三にとっても悲願なのだ。

「失礼します…」
力ない声で、書斎から正三が出た。