まるでダメ人間のロードムービーの主役のような吉村氏のどことなく弱さをにじませる声と、その歌詞もまたブッチャーズの存在性を決定付ける重要なエッセンスです。少年のような声で、「大人なんかにわかってたまるか」と強く歌うも、そこにどこか脆く弱い精神の渦巻を感じさせる。どこまでもどこまでも螺旋階段を下ってゆくような悲しみの底に、かすかに見える強い意志を持った自分。そこに手を伸ばすが、いつまでたっても届かない。終わりのないやるせなさ。でも届く希望がないと言っているわけではない。強い自分は目の前にいるのだ。あと少し、あと少しだけ…
各曲のタイトルが2~12月になっていますが、歌詞カードを開くと一曲一曲にサブタイトルがつけられているのがわかります。特に6曲目「7月」の世界観とサブタイトル(「心」)、歌詞、ギターの残響音、どれをとっても絶品です。バンドの命が注ぎ込まれたアルバムを象徴する名曲です。9分に及ぶ大作ですが、もっと聴きたいと思わせるのはなぜでしょうか? 一切の捨て曲なし、むしろ全トラックで一曲ともとれる果てしないスケールのロードムービー。終演後に味わえる満足感は、2800円では安すぎるかもしれません。
再発盤にはオリジナル未収録の「1月」という曲が入っています。全曲リマスターされており、ヴォーカルがより前に出ている印象です。
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