なんでやねん

なんでやねん

ぼちぼち

会期ラスト2日目に行ってきました。

杉田さんとしては、結婚後初の個展で、バチェラーにも出て、絵の単価を上げて、利益率は上がったけど、数量売るのが難しくなる中、杉田さんの絵をプリントしたチロルチョコセットや画集や複製原画など、単価の安い売り物も出しつつ、ライブペインティング作品を売るという新しい試みもしつつ、どうなっていくのかという辺りで。

 

個人的に良いなと思ったのは、ライブペインティング作品のポルシェと、葛飾北斎の波をゴッホ風に描いた「ゴッホ”ひまわり”が我々の身体に入るまで」。

 

ポルシェは、良い意味で永井博のイラストっぽく、三日月がステンシルで描かれていて、版画・ポップアートの文脈で、軽いタッチなのが良い。永井博・鈴木英人・江口寿史という80年代カラーイラストの中で、私は風景画の永井博・鈴木英人が好きで、杉田さんは人物画の江口寿史が好きで、杉田さんにイラストを描くことを勧めていたけど、杉田さん的には無いと。

 

杉田さんはペインターで、丸い物体を描くときに、真ん中を濃く、周辺を薄く塗ることで、グラデーションを付けて塗る技術で絵を描きます。

 

カラーイラストは、輪郭を線画で描くドローイングで、輪郭で囲まれた部分を、均一に塗られたビニールのカラートーンを貼るわけで、使っている技術が違う。

 

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北斎の波は、杉田さんがやりたかったけどずっと禁止されてきたことを解禁してやっているから、熱量が高い。

 

杉田さんには盗作疑惑がずっとあって、オリジナリティが要求される現代美術の世界にいて、美術手帖に載っている海外の現代美術作家の作品とまったく同じ作品を作って、展示販売して炎上していた時期があって。

 

杉田さんの展覧会のコンセプトを決める打ち合わせみたいなのがあって、文章や批評の事が多少わかる人として私が呼ばれた。杉田さんの中では作品は出来上がっていて、イギリスのターナー賞受賞作の○○と全く同じ外観の物を展示するので、盗作でもパクリでも無い、「オリジナルの素晴らしい作品だ」という趣旨で文章を書いてくれと言われて、元の作品と杉田さんの作品の細部の違いを見つけて、その違いに意味を持たせた文章を書くと、杉田さんは作品を修正して、元の作品との差異が無い作品に仕上げてくる。

 

俺は怒って

「杉田さんのやりたいことは、美術全集に載っている絵を全部模写して、美術史上の作品は全部俺の絵にしたいだけじゃん」

と言ったら、杉田さんは凄く感動した面持ちで目に涙を浮かべながら

「どうして、俺のやりたいことが分かるの。巣窟さんだけが僕の唯一の理解者だよ」

と言い出したので、

「違う違う(笑。悪口を言ったの、ほめた訳ではない。反論が欲しくて、批判した訳で」

 

杉田さんが言うには、母親が自宅で習字の先生をしていて、お手本を見て、お手本通りに書くのが何故、ダメなのか分からないんだよねぇ。

 

私も美大芸大の卒業展覧会に行って、油絵科、西洋画科の展示を観ると、ヨーロッパの風景や室内装飾が描かれているのですが、彼ら全員が本当にヨーロッパに行って、ヨーロッパの現物を見ながら描いているのか?西洋画の絵や、ヨーロッパの風景写真を見ながら描いているのではないか?と思わなくもない。パスポートを持っていない油絵科の美大性は、本当にいないのか?美大で西洋画の課題が出るたびに飛行機で欧米に行って絵を描いているのか?

油絵科の中の現代美術ゼミ出身の杉田さんが、ああゆう作風に成るのも分からなくも無いと言うか。現代美術科出身の現代美術と絶妙に違うと言うか。

 

現代美術は、近代美術の色んなルールを壊してきた。キュビズムは一点透視や二点透視のような遠近法を壊したし、工場での大量生産品である便器を展示したデュシャンも、クリエーターによって作られた一点物のオリジナル作品という概念を破壊した。色んなルールを破壊してきた現代美術だけど、「盗作や模写はダメだ」というルールは残っているわけで、そこを壊しに行った杉田陽平が一番現代美術なのでは無いかと(笑。

 

会場 Lufe MUSEUM