【債権の効力として問題が生じたときの処理】
①特定物債権と不特定物債権
特定物…その物の個性に着目した債権のこと。
不特定物…特定物とは逆で、物の個性に着目していない債権のこと
例:
プロ野球選手の直筆サインが書かれた選手のカード
と
同じ選手のカード
オークションなどの取引だと、
『プロ野球選手の直筆サイン』
という個性に着目して取引がされる(唯一無二の物)
→なので、この取引によって発生する債権は、特定物債権となる。
一方、同じ選手のカードでもサインがない物は
市販され世の中に流通しているカードと全く同じもの。
『この』カードがいい!
などの指定が入らない限りは
個性に着目した物(唯一無二の物)とならない
→不特定物債権となる
②弁済の提供と受領遅滞
債務者は弁済の提供の時から債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる
弁済の提供…実際に当事者に対して弁済を行う直前の状態のこと。
例:
自動車の売買契約において、売主が引渡債務に基づき買主の住所へ自動車を運び
すぐに自動車を渡せる状態。
受領遅滞…一方の当事者が指定の期日に弁済の提供を受けない状態のこと。
例:
上記の売主が自動車を指定期日に引き渡そうとしたけども、買主が不在のため
引き渡すことができなかった。
この場合、売主は買主不在の間に一度弁済の提供をしているわけだから、翌日買主から
『1日引渡しの日が遅れたのだから、その分の遅延損害金を支払え!』
と言われても、買主の受領遅滞を理由に支払う必要はない。
※債務者は弁済の提供の時から債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる
→この場合の、『債務の不履行によって生ずべき一切の責任』というのは
弁済の提供の後に生じた履行遅滞による責任
のことであって、買主の受領遅滞のあと、売主が履行不能に陥ったときは
売主は履行不能による債務不履行責任を負う(ただし、買主の受領遅滞により、売主の責任は軽減される)
→なぜなら、元々指定期日中に買主が自動車を受け取っていたならば、このような問題は
生じなかったから。
受領をできなかったという買主側の帰責性が認められる。
例:
上記の例において、買主が不在だったため、自動車を会社に持ち帰っていたところ
その最中にトラックに追突され、自動車がペシャンコになってしまった。
この場合、売主に帰責性があり自動車がペシャンコになった場合
→履行不能による損害賠償責任を負う(ただし、受領遅滞による責任軽減あり)
トラック側の一方的な不注意により追突され、売主側に帰責性がない場合
→危険負担の問題となり、特定物の物権の移転のため、『債権者負担』となる。
(危険負担の詳細は次ページ)
③危険負担
(1)履行不能につき債務者の帰責事由がない場合
双務契約で、特定物の物権の移転があった場合に
債務者に帰責事由がなく、特定物が滅失・損傷した場合
債務者の、債権者に対する債権は消滅しないというもの。
例:
プロ野球選手の直筆サイン入りカードを1,000円で売り、買主に郵送で送ったが
郵送の最中に郵便局がカードを紛失してしまった。
そのため、買主は目的のカードを手に入れることができない。
しかし、売主の買主に対する代金支払い請求権は消滅しないため、買主は売主に対して1,000円を支払わなければならない。
というもの。
これは、『債権者主義』と呼ばれていて、危険負担における例外的な規定となる。
原則は『債務者主義』といって双方に過失がなく、一方の債務が消滅したときは、もう一方の債務も消滅することとなる。
(2)債務不履行との比較
危険負担の場合…双方に故意・過失などの帰責事由のない場合に生じる問題。
債務不履行…債務者に故意・過失などの帰責事由があったときに生じる問題。
帰責事由の有無によって、判断が異なることとなる。