夏も終わり、高校生活最後の二学期を迎えた。僕にとっての大勝負の時だ。

スポーツ選手がある時に、突然それまで乗り越えられなかった記録の壁を乗り越えられた、と言う時がある。
まさしく僕がそうだった。

11月上旬に受けた模試で、初めて京大の合格可能性が、50パーセントを超えた。
夏にやったあのサブノートの効果が、じわじわと効いてきたようだ。特に、日本史、世界史の伸びは著しかった。

私立大学の方では、元々良い結果を残していた英国に日本史を加えて、80パーセントのA判定をもらうようになった。

そして、いよいよ各大学から発表された入試日程と照らし合わせて、受験大学を決定する時期になった。

最終的に僕が選んだのは、第一志望は勿論、京大の文、次に同志社、立命の文、更に担任のアドバイスもあって、東京のK大と国立大をもう一校、更に滑り止めにA大の六つの大学を受験することにした。

そんな時、担任から放課後に理事長室に行くように言われた。
理事長など、入学式で一度顔を見て以来、会ったこともない。どんな顔をしていたのか、それさえ思い出せなかった。


『君がアキラ君だね。抜群の成績だそうだね。担任の先生に聞いたよ』

『…』

『今日、来てもらったのは、君に今年の理事長賞をあげたいと考えてるんだよ』

『…』

『うちの学校では、毎年卒業式の時に、その学年で顕著な活躍をした人にあげている。インターハイとか国体で優勝したとかね。君も知ってるよね』

『はい』

『それで、今年は初めてスポーツ以外で、君にあげようと考えてる。それで、相談なんだが、君はどこを受けるか決めた?』

『はい、京都大学です』

『実はそれなんだが、京大じゃなく、東大にしないか。東大でもそんなに変わらないだろう』

そこで、僕にはすべてが理解できた。

僕に、東大を受けさせたいのだ。
やはり、なんと言っても、京大より東大なのだ。東大に一人でも合格者を出せば、私学では何よりの宣伝効果がある。

そのために、僕に理事長賞を与えるというのだ。



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