岡村は、さらに続けた。
『過去問を完璧にやって、弱点とボイントを再確認したら、9月以降はそこを集中的にやろうと考えてる』
『さすがだな。やるべきことは、一通りやり終えたということだよな。お前はいつも理詰めだな』
『アキラ君は、やっぱり予備校行くの?』
『いや、今のお前の話を聞いて、ちょっとひらめいたんだ。聞いてくれるか?』
『うん』
『俺はさ、今までとにかく、英語中心に国数をやってきた。だから、社会理科は学校の授業だけなんだ』
『うん、でもそれは正解だよ。まずは、英国数だからね。社会理科は言い方は悪いけど、後からどうにでもなるよ』
『ああ、俺もそう考えてるんだ。でも、これからも社会理科が、授業と同時進行なのは、かなり不安なんだよ。それで、この夏休みに社会理科4科目のサブノートを作ってしまおうと思ったんだ』
『サブノート?』
『ああ、教科書と参考書を見ながら、俺だけのオリジナルを作っておけば、あとはそれを直前にやるだけだ』
『なるほどね。それはいいかも知れないね。一度自分で作っておけば、余裕もてるしね。でも、一ヶ月で4科目は大変だよ。それに…』
『それに、何だ?』
『この一ヶ月、それだけに集中するのは賭けだよ。英国数は全くやらないの?』
『それは分かってる。でも、急がば回れだ。今、ちょっと遠回りしても、マラソンと一緒だよ。ようは、最後に巻き返しゃいいんだろ。今はじっと耐えて、この4科目の基礎を作っておくよ』
『そうか。国立、特に京大は理社の配点高いからな。総合力勝負だもんな。僕の医学部とは違うからね』
『ああ、話してるうちにイメージ湧いてきたよ。やっぱり、誰かと話すって大切だな』
『学生村、一緒のとこなれたらいいなあ』
『それは無理だろう。それぞれんとこで頑張ろうぜ』
『そうだね。どこに行くのかは分からないんだもんね』
家に帰ると、その晩、父に学生村の話をした。父は、夏期講習に行くと思っていたらしかったが、最後にこう言った。
『最近のお前のことは信用してる。自分がそう決めたんなら、父さんは口出ししない。でも、お金は出してやるから行ってこい』
そして、僕は申し込み、その結果、群馬県にある武尊山麓の片品村花咲に決まった。
費用は、食事と部屋代だけなので、夏期講習より安いほどだった。
後日、岡村は、新潟県の妙高高原だと連絡があった。
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