列車が動き出した。

日曜の午後のせいか、車内は込み合っている。
『次の金沢で降りる人がいるだろう』
そう思った僕は、そのままデッキに立ち、外を眺めた。
しばらくは、一人で彼女との余韻にも浸りたかった。

福井の街並みが見えなくなると、僕は、彼女から手渡された、小さな紙包みを取り出した。

中には、真っ赤な御守りのようなものが入っていた。
それは、ようなものではなく、手作りの御守りだった。


『アキラさん大学合格祈願』


表には、そう文字が刺繍してある。

僕は、じっとその文字を見つめた。

それから、何気なく後ろを見た。


『あっちゃん神社』

そこには、更にこんな文字が刺繍してあった。


僕は、思わず笑ってしまった。

『あっちゃん神社の合格祈願か…僕があげた仁和寺より御利益あるかなあ?』

僕は、その御守りを大事に両手で包み込んだ。
そして、しっかりと胸に押し当てた。

『必ず合格してみせるから』



家には、無事に帰り着くことが出来た。
自分の部屋に入ると、そのままベッドに潜り込んだ。


あっちゃんに会いに行った日から、僕の勉強は更にペースアップした。

一方、彼女との手紙のやり取りは、3日に1度から、週に1度、2週に1度と減っていった。

それは、彼女への思いが減っていったからではない。むしろ、その思いは強く、確かなものへとなっていた。


彼女と会って、一月が過ぎた頃、僕は夏休みをどうするか、そのことに悩んでいた。
この夏休みが勝負であろうことは、充分に分かっていたからだ。

僕は、岡村に会って、相談することにした。僕は、彼を信頼していた。今の勉強法も、彼にアドバイスしてもらったものだった。




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