僕は、あっちゃんの言葉を待った。
でも、次の言葉は出てこない。
僕は、再び視線をあっちゃんに向けた。
あっちゃんは、黙ったまま、目を閉じていた。
僕は、あっちゃんの肩に手をのせた。
あっちゃんは軽く頷いた。
僕は、右手で彼女の額にかかる髪の毛を、そっと払った。
あの列車の中で、初めて見た美しい横顔だ。
僕は、彼女の髪の毛に、静かに顔を寄せた。
そして、彼女の唇に、優しく人差し指を押し当てた。
『あっちゃんは、僕がリザーブしたよ』
『えっ、リザーブ?』
彼女が驚いて、目を開けた。
『そう、今この瞬間に、僕が予約した』
『予約?あたしを?』
『ああ、来年の3月まで』
『3月って、大学受験?』
『いや、正確に言えば、京大の合格発表の日まで』
『アキラさん、絶対に合格して下さいね。そうじゃないと、あたしの方から予約キャンセルしちゃいますよ』
『わかった、絶対に合格するから…それまで待っててくれる?』
『はい…』
僕は、彼女の身体を抱き寄せ、彼女は身体を僕に預けた。
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