そんな話をしているうちに、電車はいくつかの小さな駅に止まり、いつの間にか市内を抜けていた。

車窓には、田園風景が広がり、それが鬱蒼とした森に変わると、山並みがすぐ近くまで迫ってきた。
そして、線路と並行するように川が流れ、その水底まで見通せた。

窓から見える美しい眺めに、二人の会話は途切れた。

間もなく、永平寺口到着の放送が流れ、二人は同時に立ち上がった。
駅は小さくて、駅前の道も狭い。それでも、お土産屋さんが数軒あり、永平寺に行くのには、ここで間違いないようだった。

僕は、お土産屋さんの前で、道を尋ねた。

『永平寺行きたいんですが…』

『はい、この先からバスが出てますよ』

『えっ、歩けないんですか?』

今度は、あっちゃんが聞いた。

『山道だし、道も狭いから時間がかかりますよ』

『バスだとどれくらいの時間ですか?』

『そうですね。15分位です』

『はい、ありがとうございました』

僕は、お礼を言って、あっちゃんを見た。

『アキラさん、ごめんね。結構遠いんですね。止めますか?』

『いや、折角来たんだから行こうよ』

『そうですよね~二人だったら、どこでも同じですよね~』

『どこでも同じじゃないけどね』

僕は、うれしさを隠しながら言った。

『うーん、アキラさんの意地悪~』

僕達は、バス停に向かった。

二人で乗る、狭いバスのシートも悪くなかった。
永平寺までは、教えてもらった通り、15分ほどで到着した。

バスを降りた時に、時計を見ると、まだ9時半前を指していた。

『一時間は充分見られるね』

僕が言うと、

『はい、そうですね。さあ、行きましょう』

二人は、足取り軽く山道を登った。





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