そこは、官公庁があるらしく、整然とした綺麗な公園だった。
『あれが県庁で、あっちが市役所。ここは、昔お城があったんだけど、火事で焼けてしまったみたいです』
『あの県庁の横にあるのは?』
『ああ、あれは警察本部だと思うんだけど』
『ああ、そうか。あっちゃんも福井来てから、そんなに経ってないんだよね』
『そうなんです。だから、アキラさんを上手に案内できるか不安』
『そう言えば、この間、日本史で習ったんだけど、永平寺って近いんだよね』
『永平寺ですか?近いですよ。多分…今日の候補の一つでしたあ。行ってみますか?』
『うん、近いんだったら行ってみたいな』
『分かりました。じゃあ、駅から小さな電車が出てたはずなので、それに乗りましょう』
『はず?』
『はい。実はあたしも行ったことないんです、永平寺。でも、うれしい~』
『うーん、そういうことじゃないんだけどな』
僕は、苦笑いし、あっちゃんは大喜びで、走り出した。
僕も、あっちゃんの後を仕方なく追いかけた。
僕達は、再び福井駅へと向かった。
ほんの数分の距離だ。
『あっ、あたしの家、さっきの公園のすぐ近くなんですよ。お母さんがアキラさんを連れて来いって、うるさくて…』
『えっ、お母さんに言ってきたんだ』
僕は、少々驚いた。女の子とは、そういうものらしい。
不思議そうな顔をしたあっちゃんが、
『アキラさんは言ってこなかったんですか?』
『うん、まあね』
『今頃、家出人捜索願い出されてたりして~』
『まさか、脅かさないでよ。僕は男だから大丈夫』
そんな会話でも、本当に楽しかった。
いや、このようなありふれたものこそ、僕が待ち望んでものだった。
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