そんな生活が数ヵ月続き、3月になった。
今日は、あっちゃんの合格発表の日。
僕は、朝から落ち着かない。
4時に電話がくることになっていた。
思えば、あっちゃんと直接話すのは、あの福井駅での2分間以来のことだった。
すべては、手紙でやり取りしていたので、それも落ち着かない理由だったかも知れない。
あっちゃんの志望校は、県下有数の進学名門校だ。
週刊誌の高校別、大学合格者数を見ると、驚いたことに京大に10名以上の合格者を出していた。
急いで学校から帰ると、僕は電話の前に座った。幸い、家には誰もいない。
あっちゃんも、僕が4時に寝ることは知っているので、必ずこの時間にかけてくるはずだ。
僕は、腕時計と電話を交互に見た。
4時ジャスト。電話が鳴った。
『あの、アキラさんは……』
『あっ、僕だよ。アキラです』
『良かった~』
『うん、どうだった?』
僕は、息をのんで次の言葉を待った。
『実は……、あたし……、合格してまし た~』
『……良かった……』
『えっ、それだけですか?』
『うん』
『アキラさんの仁和寺の御守りが効きました』
『うん』
『今度は、アキラさんの番ですね。あたし、いっぱい応援します』
『うん』
『久しぶりなのに、アキラさん、うんばかり』
『うん』
『もう!』
『うれし過ぎて……落ち着いたら手紙書くから』
『分かりました。待ってます。それから……』
『何?』
『声聞いたら、会いたくなっちゃった』
『うん、僕もだよ。近いうちに、必ず会いに行くよ』
『えっ、本当?それが、最高の合格祝いです。あっ、自分から催促しちゃったあ』
『そうだね』
『じゃあ、アキラさん、寝る時間過ぎちゃったから、そろそろ切るね』
『ああ、今日はうれしくて眠れそうにないけどね。本当におめでとう』
『アキラさん、本当にありがとう。じゃあまたね。おやすみなさい』
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