先頭車両は自由席になっていた。それでも幾つかの空席があって、その一つに僕は座った。

ところが、そわそわして落ち着かない。札幌の改札口とは違った不安だ。

必ず来てくれると確信しているからこその不安感。

僕は、仁和寺で買い求めた御守りを握りしめた。あっちゃんへのおみやげだ。

これが、学業に効果があるのかは、全く分からない。でも、仁和寺で感じたあの、何とも言えない充実感は、きっとこの御守りで伝わるはずだ。
僕はそう思って、じっとそれを見つめた。

その時、車内放送が流れ、福井駅到着が近いことを知らせた。

僕は、そっと席を立ち、デッキへとゆっくり進んだ。

乗降口の扉の小さなガラス窓から、やがて福井の街並みが見えてきた。三日前は、暗くて何も分からなかったが、僕の住む街よりも大きい街だった。

僕は、壁に寄りかかるように、ガラス窓に顔を近づけ、進行方向をじっと見た。

いつの間にか、この駅で降りる人達が、数人僕の後ろに並んでいた。僕の方を不思議そうに眺めている人もいる。

僕は、一切気にすることもなく、さらに顔を窓に近づけた。

白鳥号は減速し、ホームが見えてきた。

それでも、僕の乗った先頭車両は、かなりのスピードで、ホームにいる人の顔は良く見えない。

『先頭車両より、最後尾の方が良かったかな』

そう思っているうちに、列車は止まり、僕の目の前の扉が開いた。



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