初めての関西は、夕方になっても暑かった。
僕の住む、日本海に面した港町は、既に秋の気配が漂っていたので、尚更にそう感じたのかもしれない。
ホテルの前までは、大型バスは入れないらしく、大通りから10分ほど歩いた。
そして、小さなホテルに着く頃には、ワイシャツが汗でびっしょりになっていた。
部屋は二人部屋。同室になったのは、高山ではなかった。
『後で遊びに行くから』
彼はそう言って、隣の部屋へと消えた。
修学旅行二日目。
僕は、朝を知らせる館内放送で目をさました。
昨晩、高山は来なかった。僕も疲れのせいか、夕食を済ませて、風呂に入るとすぐに寝てしまった。
『朝食行こうか』
僕は、同室になった平田に声をかけた。
平田は、無口で物静かな男だった。
『ああ』
僕の後に続いた。
朝食はバイキング形式で、すでに並んでいた高山が声をかけてきた。
『昨晩は悪かったな。俺寝てしまったよ』
『俺も同じさ。寝台は全然寝られなかったからな』
『そう言えば、アキラ、通路に出てたよな』
僕は、列車の中で二時頃に起き出し、通路の椅子を引き出して、ずーっと外を眺めていたのだ。
ほんの一瞬でも、あっちゃんの住む街を見るために。
でも、福井の駅のホームは確認できたものの、街並みは暗闇に埋もれていて、所々に微かな灯りを見るだけだった。
それでも、
『この街の何処かで、あっちゃんは眠っているんだな』
そう考えるだけで、僕の胸は熱くなった。
『今日もまたお寺めぐりか~』
気のなさそうに高山が欠伸をした。
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