といえば、昔はルイス・キャロルの原作と覚えていましたが、実際に書いたのはイギリスの数学者、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンという男性です。 彼が児童小説『不思議の国のアリス(原題: Alice’s Adventures in Wonderland)』を、ルイス・キャロルのペンネームで書き、1865年に発行したことはいまや常識なのだそうです。

 

 さてその小説を基に1951年にディズニーが制作したアニメ映画の原題が「Alice in Wonderland」で、その主題歌が「不思議の国のアリス(Alice in Wonderland)」です。georgesandさんからこの曲のリクエストをいただき、popfreakもこの曲を思い出したのです。 この見事な主題歌を手掛けたのは、作詞がボブ・ヒリヤード、作曲はサミー・フェイン。サミー・フェインといえば、「慕情」(Love Is A Many Splendered Thing)や、パット・ブーンが歌ってヒットした「四月の恋(April Love)」の作曲でもお馴染み。スケールの大きなメロディランにボクは、いつも感動を覚えます。 

 

まずは1951年のアニメ映画のオープングを見ながら、女性コーラスの優しい歌唱が懐かしいオリジナルサントラ聴くことろから始めたいですね。ちなみに当時の資料には「アニメ映画」とは表現されておらず、ボクの手元の「世界映画音楽辞典」でも

「幻想動画」と表現されています。

 

 

 

 

こんなおなじみのナンバーですが、意外にこの曲の歌唱ヴァージョンが少ないのです。それらの中からごの時代とマッチした雪村いづみさんのSP時代の音源が見つかりました。 雪村いづみは、1番と3番を英語で2番は日本語訳詞で歌っています。チャーミングなイラストが描かれたレーベルには、井田誠一・訳詞、多(おおの)忠修・編曲とクレジットされています。  

 

井田誠一は、戦後になって活躍した作詞家で、「遥かなる山の呼び声」、「青いカナリヤ」、「オー・マイ・パパ」などの訳詞は、雪村さんの歌唱で聴いた方も多いと思います。ちなみに「若いお巡りさん/曽根史朗(歌)」の作詞もこの方だそうです。余談ですが、編曲の多(おおの)忠修は、雅楽家の家系の方で、ジャズ界で活躍されました。

 

それと「Alice in Wonderland」で作曲家クレジットに映画音楽の大家、ディミトリ・ティオムキンと表記されている場合がありますが、それは1931年の映画化に際して音楽を担当したためです。題名が同じなのでややこしいですね。 次なる女性シンガーは、popfreakが最近とてもお気に入りの台湾の女性シンガー、ジョアンナ・ウォンの英語歌唱です。ボクはこのタイプのウィスパー系女性シンガーに弱いのです。

 

YouTubeで知って気に入り、思い切って台湾ソニー製のCDまで買ってしまいました。これが映画音楽曲集で、アルバムタイトルは『午後劇院/王若琳』(冒頭の写真)。「アリス・・」以外にも「ムーン・リヴァー」「Pure Imagination(夢のチョコレート工場・主題歌)」のほか、「花様年華」のテーマも歌っていて、この夏の盛りに愛聴しています。脱線しました・・。 

ジョアンナ・ウォンの「不思議の国のアリス」

 

 

次は古いジャズ/ポップのコーラス・グループ、モダネアーズ(女性1人、男性4人)の「不思議の国のアリス」です。ボクはコーラスグループのLPやCDを中古レコード店で漁っていた時期があり、その時に見つけたお気に入りグループです。ハッピーな時代のアメリカを感じさせてくれるステキなハーモニーです。

 

 

 

オスカー・ピーターソン・トリオの演奏による「不思議の国のアリス」は、ドイツのMPSレーベルの録音です。この録音の行われた1968年ごろのアメリカのポピュラー音楽は、ロックへの傾斜とベトナム反戦に揺れていて、王道のジャズ奏者はレーベルとの契約を解除され、ヨーロッパに活動の拠点を移した人も多くいました。Verveの代表的ピアニストであったピーターソンも例外ではなく、ドイツのこのレコード会社と契約していました。 このレーベルは録音が良くて、盤質もいいので日本でも人気があったようです。当時のアメリカからの輸入盤は、盤面ザラっとしていてボクもあまり好きではありませんでした。ドイツ製造のLPは総じて盤質がよく、グラモフォン盤やアルヒーフ盤とか、ホレボレするほど綺麗なディスクだった記憶があります。MPS盤も綺麗でした。 オスカー・ピーターソン(p)、サム・ジョーンズ(b)、ボブ・ダーハム(ds)のトリオです。

 

 

 

ビル・エヴァンス・トリオ ヴィレッジ・ヴァンガード ライヴ 『Sunday At The Village Vanguard』(1961年6月)に収録されている「不思議の国のアリス」です。メンバーは、Bill Evans - piano、Scott LaFaro - bass、Paul Motian - drumsと、『ワルツ・フォー・デビー』とメンバーも時期も同じ頃のライブ録音です。

 

それにしてもこのライブの数日後に、将来を嘱望されていたベースのスコット・ラファロを交通事故で失ったことはビルにも大きな痛手となったようです。ところでこのライヴ、ちょっと食器の音や客のおしゃべりが気になるのは、ボクだけでしょうか?ボクがロンドンのクラブでビルのライヴを見たときは、客席も静かでボクは緊張のあまり水も飲まずに前身耳と化していたのに・・・。

 

 

 

次は、「テイク・ファイヴ」でおなじみ、デイヴ・ブルーベックのクアルテットで「不思議の国のアリス」。サックスのポール・デスモンドの持ち味がボクはとても好きです。ちなみに「テイク・ファイヴ」はポール・デスモンドの作曲です。  

 

最後は、昨年亡くなったチック・コリア(p)とエスペランサ・スポルディング(b)、ジェフ・バァード(ds)による「不思議の国のアリス」です。

 

 

 

「不思議の国のアリス」ほかにもたくさん名唱があったはずなのに、YouTubeでは見つけることがきずに残念です。サミー・フェインならではのスケールの大きなメロディを歌える方、ぜひカヴァーしてみてください。

 

 というのは、ちょうどこの7月16日から東京六本木の森アーツギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)で「特別展アリスーへんてこりん、へんてこりんな世界ー」が開かれていますから、この歌も期待されるのではないかと思います。

 

かといって、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の2010年度作品では、主題歌はアヴリル・ラヴィーンで別の曲ですから、ちょっとね。 なおアリスの特別展、大阪では12月10日からあべのハルカス美術館で開催されるそうです。