前回、オール・イタリア・ロケの映画『恋愛専科』の主題歌「アル・ディ・ラ」を記事にしたところ、イタリア・ロケの先輩格映画『旅情(原題:Summertime』)の主題歌「ヴェニスの夏の日」(原題:Summertime in Venice)のリクエストをいただきました。

 

 さらに遡るとイタリア・ロケでは1953年の『ローマの休日』が有名ですが、音楽の記憶がありませんし、主題曲は使われていないようです。あの映画はオードリーの王女姿が輝く主役で、どんな音楽が流れても脇役にもなりえなかったのでしょう。 

 

さて、デヴィッド・リーン監督の名画『旅情』(1955年)は、ハイミスのキャサリン・ヘップバーンが一人旅のヴェニスで、現地の中年紳士とかりそめの恋に落ちるという切ない物語です。その数々の名場面に流れるのが主題曲「ヴェニスの夏の日」。 流れるようなストリングスによるメロディの作曲は、アレッサンドロ・チッコリーニで、歌詞はイタリア語と英語の両方が付けられています。 まずは予告編で名シーンを思い出してみたいと思います。  

 

映画公開とほぼ同時に主役を演じて“中年の星”に躍り出たロッサノ・ブラッツィがイタリア語でレコードを発売しました。うーん、主役の特典でしょうか。といっても歌い手が本業がありませんのでね。伴奏はユーゴ・ウィンターハルター楽団です。  

 

意外なジャズ歌手がカヴァーしていります。バディ・グレコは、イタリア系アメリカ人。そのせいか、最初はイタリア語で始めて途中から英語にて歌っています。ボクはこの人のLP『Buddy & Soul』を一時好きで愛聴していました。タイトルが洒落てるでしょ。  

 

この「ヴェニスの夏の日」は、意外にアメリカの歌手の録音が多くなく、ザ・ピーナッツや江利チエミなど日本で洋楽ポップスを得意としていた歌い手が日本語で録音しています。 では日本勢を代表してザ・ピーナッツの「ヴェニスの夏の日」です。  

 

イタリア出身でイギリスで活躍したムード音楽の巨匠、マントヴァーニの楽団もこの曲を録音しています。ボクはこの楽団のカスケーディング・ストリングスといわれる滝のような流麗なストリングスが大好きでした。アルバム『わがイタリア(Italia Mia)』をLPで愛聴していました。  

 

最後は、この映画『旅情』愛に溢れた名場面集(編集されています)で癒されてみたいと思います。  

 

キャサリン・ヘップバーンが演じるハイミスの切ない女心を見事に伝えてくれるデヴィッド・リーン監督に敬意を表したくなる名画ですよね。 

 

リクエストいただいたDupinさん、いかがでしょうか。