軽快な3拍子のシャンソン人気曲「パダン・パダン」。原題が「Padam padam」であることから「パダム・パダム」と表記されることもありましたが、エディット・ピアフのヒットさせたナンバーであることはシャンソンの好きな方には広く知られています。

 

 正式に発表されたのは1951年のことですが、曲(ノルベール・グランズベース)はその10年ほど前にできていたそうです。それをたまたま耳にしたピアフが、曲に合わせて「パダン、パダン・・・」と口ずさんだところを、作詞のアンリ・コンテが歌詞を付けたとボクのシャンソン参考書に載っていました

 

。前回ご紹介した「群衆」がアルゼンチン土産だったことといい、エディット・ピアフのヒット感覚が素晴らしすぎますね。 ちなみにこの「パダン・パダン」は、1952年度のADFディスク大賞を受賞したとのことです。その歌詞は、一種の脅迫観念をテーマにしているそうですが、フランス語といえば“ボンジュール!”しか知らないpopfreakとしては全く理解できません(汗)。ぜひどなたかチャレンジしてみてください。 

 

さてこの曲の立役者、エディット・ピアフのモノクロ動画がYouTubeに上がっています。注目すべきは、彼女の右手と左手の動きです。前回の「群衆」でも神がかった身のこなしで度肝を抜かれましたが、今回の“神の手”(笑)にもご注意あれ。  

 

「パダン・パダン」とくればもう一人、大事な歌い手いを忘れてはいけませんよね。パタシューです(ボクも忘れていて、追加しました。パタシューさん、ゴメンなさい)。この軽やかさこそが彼女の持ち味で、この曲のもう一つの魅力を表現してくれています。  

 

その後この曲は、多くのシャンソン歌手によって歌い継がれています。そこがフランスの音楽文化の素晴らしいところですが、日本でも人気のあるミレーユ・マチューが歌っています。いや、歌わされています。

 

2013年1月の寒いパリはエッフェル塔の上の、とても狭い踊り場で歌わせるTVって何と無茶振りをするのでしょうか。本当にお気の毒ですが、さすがのマチュー、堂々たる歌唱を展開しています。ハラハラしながらご覧ください。高所恐怖症のボクには到底ガマンできませんが(笑)。  

 

前回ご紹介の「群衆」をZazとデュエットしていたノルウェン・ルロワが、2007年にテレビの公開番組で歌っています。彼女は1982年にブルトン人(ケルト系だそうです)の家庭に生まれたそうです。この番組時には25歳くらいですが、すでに素晴らしい歌唱力を披露しています。この人はシャンソンの王道の継承者のようにボクには思えてなりません。CDを買いたくなる人ですね。  

 

前回は動画が見つからなかった(見つかったものの画像・音質が悪かったのでパスしました)パトリシア・カースのライブ映像です。なんとアズナブールが見守る中の絶唱です。これを見て、“ピアフの後継者”とボクが認識していのもあながち外れてはないと思わされるカースに感動すら覚えます。

 

日本では岸洋子さんが、コンサートで歌っています。前半はフランス語歌詞で、後半の一部は日本語で、そして最後にフランス語に戻るステキな歌唱です。日本のシャンソン歌手としての活躍はもとより、「希望」(藤田敏雄・作詞、いずみたく・作曲)や「夜明けのうた」(岩谷時子・作詞、いずみたく・作曲)の大ヒット曲があり、これらこそ日本で歌い継がれるべき名曲です。  

 

シャンソンが似合う男性歌手、沢田研二さんもピアフをトリビュートしたご自身のACTシリーズにて歌っています。このシリーズは1989-1999にグローブ座で継続的に上演されたもので、クルト・ワイル以外のボリス・ヴィアン、エディッド・ピアフなど、計9つのシリーズがDVD化されています。

 

企画力と歌唱力を兼ね備えた素晴らしいシンガーだと思います。それにその企画にチャレンジする姿勢が見事ですよね。  

 

最後にYouTubeでプエルト・カンデラリアという、どうやら南米はコロンビアの新しい音楽グループによる「パダン・パダン」のミュージックヴィデオを見つけました。 

 

なんと本来は三拍子であることを疑う余地なく聴いたボクには、衝撃の4拍子(笑)。しかも今風のベースライン、リズムパターンで歌い演奏されます。もしピアフが生きていてこの演奏を聴いていたら気に入っていたのではないか、とボクは勝手に想像しています。  

 

日本では忘れ去られた感があるフランスのシャンソン。辿ってみると奥深い音楽の世界が広がります。歌詞、メロディ、そしてそれらを彩った名歌手のみなさん。いまも歌の伝統を重んじる国として多くの人気歌手が過去の名曲を歌い継いでいる様子に、すこし嫉妬すら覚えます。

 

 とはいえ、朝の連続TV小説『エール!』がここまで人気があることに驚き、古関裕而さんの名曲がドラマの最終回を飾ったように、日本でも過去の名曲の数々が歌い継がれんことを願っています。 

 

この曲「パダン・パダン」もDupinさんのリクエストでした。新たな気づきをいただきました。ありがとうございます。