「クリープ」といっても、コーヒーに入れる粉末のアレではありません。またオートマ車のアイドリング状態でブレーキを放すとトロトロ進む現象もクリープといいますが、レイディオヘッドの「クリープ」は、Creep本来の意味「這う、徐行」とも違って、俗語の「いけすかないやつ」を意味するようです(参照:現代英和辞典、研究社)。

 

ファーストアルバム『パブロ・ハニー』の収録曲ですが、時に1993年。オルタナティヴ・ロックが英米にて生まれてきた時代です。

 

Radioheadの「クリープ」、この曲を作り、歌うトム・ヨークの屈折感が半端ない。

 

 


この曲が再び忍び寄るように耳に届いたのは、2011年1月に公開された映画『ソーシャルネットワーク』においてでした。このデヴィッド・フィンチャーの映画が、Facebookとマーク・ザッカーバーグの名前を世界に広めることになります。

 

この映画公開前にすでにFacebookにアカウントを持っていた新しいモノ好きのボクは、映画公開を機に友人申請がどっさり来たことに驚きました。予告編でも女性コーラスで「クリープ」が歌われています。

 


余談ですが、Johnny Deppと Charlotte Gainsbourgの映画『フレンチなしあわせのみつけ方( "Ils se marierent et eurent beaucoup d'enfants")』(2004年)でもこんなシーンで使われています。

 

 

R&Bシンガーのメイシー・グレイも歌っています。カヴァー集アルバムに収録されていますが、レニクラ女性版的な彼女の圧倒的存在感に押されまくっています。2012年のテレビ番組でのライヴ映像は、やや大人しめ(笑)です。

 


一方では、プリテンダーズのクリッシー・ハインドもカヴァー。アコースティックサウンドでナイスです。

 


かと思うと、カントリー系のケリー・クラークソンのライヴでの「クリープ」は、本家トム・ヨークの脱力系とは真逆で全力歌唱。女子、力強し。

 


映画『ソーシャルネットワーク』を観たボクの印象を最後に一言。

 

主人公(マーク・ザッカーバーグ)の「社会性のなさ」に驚き、こんな人が始めたSNSは辞めようかな、とマジに(笑)。あにはからんや、今やGAFAの一角を担うなんて・・・思いもしませんでした(汗)。


さて今回も【蛇足】ながら、「クリープ」にまつわる盗作問題をご紹介。

 

ホリーズといえば「バス・ストップ」を連想する世代の方が多いと思いますが、彼らが発表したちょっと地味な曲「The Air That I Breath」(1974年)のパクリだと作曲のアルバート・ハモンドとマイク・ヘイゼルウッドがトム・ヨークを訴えたそうです。どうですか?似てますかね。

 


JASRACのデータベースで調べると、どうやらこの訴えが認められたようで、アルバートとマイクも作家にクレジットされています。

 

その腹いせか、今度はRadioheadがラナ・デル・レイの「Get Free」を盗作と訴えています。

Lana Del Rey - Get Free (Official Music Video)

 

 


最新は、時間と経費のかかる裁判を避けて、「どや、似てるやろ?痛い目にあいたくなかったら、トットと共同著作にして取り分をよこしなはれ」(関西弁に意味はありません。笑)という手法が音楽業界ではまかり通っているようです。

 

だれでも聴いて影響を受けた音楽があるはずなのに、不毛な水面下の恫喝が幅を利かせているようでは音楽業界に未来はないのかも?。