ずーっと童謡だとばかり思っていたシャンソン。1953年にフランシス・ルマルク作詞 ルドルフ・レヴィル作曲で公表され、同年12月にルマルク自身が録音したレコーが大ヒットしたとのことです。

 

最初の映像は、それから3年経った1956年にルマルクがテレビ出演時の歌唱から。曲想が軽快でまるで「みんなのうた」のようなイメージがありますね。

 

 


日本で知られているのは、ペギー葉山の歌唱です。NHK「みんなのうた」で1963年の2~3月に放送されたようです。日本語詞は、音羽たかし。これはキングレコード文芸部のディレクターが作詞した場合の共通の筆名で、いわば職務著作らしいです。

 

 


日本でも大変人気のあったイヴェット・ジローの「小さな靴屋さん」。この人といえば、反射的に「♪アルカナ ムカシニ・・」で始まる「詩人の魂」日本語版を思い出します。「ハ」が「ア」になるのは、フランス語では「H」がサイレントだと始めて知ったときの驚き(笑)。

 

 


そうかと思うと、男性コーラスグループ、エイムス・ブラザーズが歌う「小さな靴屋さん」

 

 


この曲が言語圏を超えてヒットしたことの証はゲイローズのヴァージョンで知ることができます。3人男性コーラスが、1954年のテレビ出演時にスペイン語と英語でチャンポンで歌っています。

 

 


この歌、日本語で歌われる際の歌詞は童謡のような可愛いい靴屋さんの店頭を思わせてくれますが、原詞では実にコワ~イコワーイ内容を歌っていると知ってビックリ。

 

永田文夫・訳を参考にすれば・・・

 

☆踊りに行きたいと思っていた小さな靴屋さんが、店に入ってきたきれいな娘さんに「靴を差し上げますよ。私と踊ってくれればお代はいりません。」と話しかけます。

その娘さんのの言い分は、なんと「お馬鹿さん、おつむに何が入っているの?ただ一足の靴で、恋が買えると思っているの?」というキツーイ返事。

でも無料なのを了解して彼女は靴を持ち帰ります。そして踊りの日、靴屋さんのめかしこんで彼女と踊ろうとすると、彼女は鼻で笑って断わってこう言いました。

「小さな靴屋のお馬鹿さん。おつむに何が入っているの?ただ一足の靴で、私の心が買えるとでも思っているの?」

ところが彼女がその靴を履き、3歩も踏み出さないうちに、魔法のように靴はコマのようにぐるぐる回り始めたのです。彼女は夜明けまで踊り続け、疲れ切ってささやきました。

「止めて頂戴、小さな靴屋さん。私のしくじりを笑わないで。あなたには負けたわ。許して頂戴。小さな靴屋さんはお馬鹿さんじゃない。あなたのおつむが分かったわ。」

ふたりそろって浮き浮きと、人生の踊り場へダンスをしに行きましょう。☆


靴が独りでに動き回って止められないなんて、まるでオカルト映画みたいですね。ちょっと意外な歌詞の展開に驚いたのは私だけではないでしょう。イソップ童話のような教訓入りだったとは意外でした(笑)。


さて英語になるとどこまでオカルト色が薄まるのでしょうか。麗しのローズマリー・クルーニーです。

 

 


ペトラ・クラークとくれば「ダウンタウン」。こんな歌も歌っていたのですね。なんでも彼女の英国での初ヒット(チャート7位までいった)だったそうです(1954年)。

 

 


最後は、ザ・ピーナッツのビッグバンド・アレンジによる歌唱です。ステキです。彼女たちは世界の曲を歌い、また何度も海外に出向いて世界に日本のポップスの良さを広めた功績は大ですよね。 

 

 


「小さな靴屋さん」は、善意の人たちの歌だとばかり思っていたところ、オリジナル歌詞の内容は意外な展開でした。

歌のイメージにとらわれないことを痛感しました。

この曲をリクエストしていただいたDupinさんに感謝したいと思います。ところでDupinさんはこのことをご存じだったのでしょうか。だとすると恐るべし。