伝承歌のルーツを辿ると、却って混乱することが分かりました。メジャー(長調)かマイナー(短調)か、はたまた三拍子か四拍子か。どこでどう伝わったかによって、歌の根本が変わってくるから不思議です。

 

さて、60年代に入ると時代はフォーク・ムーブメント。ちょうど1960年に録音したジョーン・バエズの歌唱が(おそらく)モデルとなって多くのフォーク、さらにはロック・アーティストによって歌われることになりました。

 

ジョーン・バエズの澄み切った歌声に乗せた歌の主人公の悲哀が浮き彫りになります。

 

 


その後1962年にCBSからデビューしたボブ・ディランのファースト・アルバムにも収録されていました。

そのCDのライナーノーツによると「デイヴ・ヴァン・ロンクがディランに教え、ディランがアニマルズに教え、アニマルズのレコードによって世界的に有名になった曲」(中村とうよう)とあります。

 

デイヴはアマチュア時代のヴィレッジ付近でのフォーク仲間で、マネージャー的なこともやっていた人らしい。中村によれば「デイヴは自分がレコーディングする直前に、ディランがデイヴのアレンジを使ってレコーディングしてしまったため、大いに怒ったという」。しかしディランがデビュー作で録音する前にバエズのレコードを聴いていないわけはなく、ディランとしてはCBSレコードのプロデューサー、ジョン・ハモンドとの収録曲決めに際してバエズのヴァージョンが頭にあったのではないか、とpopfreakは推測しています。


ちなみに、あまり、どころか、ほとんど売れなかった(らしい)ディランの初LPをCBSのエグゼクティヴたちは「ハモンドの趣味」と揶揄していたことは広く知られています。ディラン2枚目のアルバム『THE FREEWHEELIN'』(「風に吹かれて」“Blowin' In The Wind”収録)でセンセーションを巻き起こしたことで、ジョン・ハモンドも再評価されたに違いありません。(ハモンドのアメリカ音楽史における功績は多々ありますが、ここではパスします)


ボブ・ディラン 1962年 デビューアルバム収録ヴァージョン。録音は1961年11月20日。

 

 


フォーク界の代表アーティストが歌っているこの曲には、実に多くの多彩なカヴァーがあります。

異色の組み合わせ、B.B.キングとマリー・トラヴァース(PPMのMさん)が2012年に共演しています。

 

 


そうかと思うと、問題発言を繰り返したアイルランドのシンガー・ソングライター、シンニード・オコーナーによる「朝日のあたる家」もあります。

 

 

ジャズ界に独自の表現世界を提示したニーナ・シモンは、この曲を珍しくリズミックにで歌っています。

 

 


ハードロックのボン・ジョビもライヴでカヴァーしていますが、ちょっとキーが低すぎたかもしれません(笑)。

 

 


音楽のジャンルを超えて取り上げられてきた伝承歌「朝日のあたる家」。フォーク時代の洗礼を受けて楽曲も洗練され、イギリスのロックグループ、アニマルズによって世界で大ヒットしました。

 

次回はわが国アーティストの歌唱盤を紹介したいと思います。