マイブログでは、なかなか畏れ多くて(笑)取り上げにくかったビートルズ・ナンバー。名曲あまたあるなかで、いくつかの秀逸なカヴァー・ヴァージョンがYouTubeに上がっているジョージ・ハリソン作の「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」を取り上げてみたいと思います。

 

1968年5月30日から同年10月16日までの4か月半に渡ってアビーロード・スタジオで日課のように行われた録音が完成したのが(通称)『ホワイト・アルバム』。ジャケットが真っ白のエンボス加工の2枚組LP(発売は11月22日発売)。

 

それぞれが持ち寄った約30曲を録音しながら、メンバー間の過度の緊張のため録音エンジニアのジェフ・エメリックはこの録音から抜けてしまうし、プロデューサー、ジョージ・マーティンでさえ途中で置手紙をして休暇を取るなど、レコーディングを仕切る役割を果たすキーマンがいなくなってしまったそうです。

 

それほどの環境のなかで完成した作品は、前年に発表されコンセプト・アルバムの誉れ高い『サージャント・ペッパー・・・』や『マジカル・ミステリー・ツアー』などとは様相を異にし、単曲ごとの魅力に溢れたナンバーが呉越同舟状態で収録されました。ボクが持っている2009年9月に発売されたリマスター盤2枚組には、「バック・イン・ザ・USSR」「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」「ブラック・バード」「ヘルター・スケルター」、それにこの「ホワイル・マイ・ギター・ウィープス」と並んで収録されているとご紹介すれば、ボクの説明に納得してもらえるに違いないと思います。

 

曲想バラバラ、でもそれぞれの曲が自由なのです。ジョージ・ハリソンもインド哲学によって解放された気分を綴り歌ったのかもしれません。


まずはそのビートルズのオリジナル・ヴァージョン。この曲の録音に際して、ジョージは友人のエリック・クラプトンに依頼してソロを演奏してもうためにスタジオに誘いました。スタジオ・ミュージシャン以外でビートルズに参加したミュージシャン第一号だったようですが、レコードには一切クラプトンのクレジットは記載されていません。

 

おそらく専属録音契約の問題が発生するのを避けたものだと思いますが、間奏のギターを聴くとナルホド!クラプトンだと分かりますよね。

 

 

そうして創作された「ギター・ウィープス」は、多くのギターファンにも愛されました。ジョージの作曲には「ノルウェイの森」(タイトルの訳が論争となった)や、この後のアルバム『アビーロード』の「サムシング」、さらにソロ独立後の「マイ・スウィート・ロード」(シフォンズの「He's So Fine」と盗作裁判となった)などが有名ですが、ギタリスト、ジョージならではの「ギター・ウィープス」が大好きな人が今も多いようですね。

 

1987年にジョージ・ハリソンを囲んでのロック界アーティスト大集合ライヴの歌唱・演奏です。

 

ちなみにメンバーは以下の通り。

George Harrison: Voice & Guitar
Eric Clapton: Guitar (a Les Paul)
Jeff Lyne: Guitar
Phil Collins: Drums
Ringo Starr: Drums
Ray Cooper: Percussion
Mark King: Bass
Elton John: Piano
Jool Holland: Piano

 

 

この曲のカヴァーでは、昨年亡くなったアメリカ・ロック界のプリンス(文字通りですね)もこの曲やってます。 

 

 

かと思うと、西海岸ロックの代表選手のようなTOTOまでも「ギター・ウィープス」やってます。

 

 

70年代のアイドル的ギタリスト、ピーター・フランプトンが2008年にウィーンにてこの曲やってます。意外なことは、『カムズ・アライヴ』ジャケットのあの長髪で可愛いかったベイビーフェイスのピーターが・・・とその変容と貫録ぶりにビックリしたり(笑)。
 


さてこの人の創作意欲には敬服します。Santanaが2010年にインディア・アリー(VO)ヨーヨーマ(Cello)と一緒に発売したアルバムのメインはこの曲。カッコいいですねぇ。

 

 

この曲を作ったジョージが2001年11月に亡くなり、翌2002年に行われた追悼ライヴでの「ギター・ウィープス」。ここでも因縁のクラプトンが参加しています。もちろんマッカートニーらに混じって、パパそっくりの息子ダーニ・ハリソンも演奏に参加しています。ビックリするほど生き写し。

 

 

最後に異色の「ジェントリー・ウィプス」。ビートルズのプロデュサーであったジョージ・マーティンとその息子ジャイルス・マーティンが、2006年にシルク・ド・ソレイユの全曲ビートルズのショウ『LOVE』のために、60年代にジョージが『ホワイト・アルバム』のために事前に録っていたアコースティック・ギター・ヴァージョンのデモ・テープに大ストリングスをアレンジし、ダビングして完成させたヴァージョン(ストリングス・アレンジはジョージ・マーティン)が収録されています。このMVも素晴らしいです。

 

 

永遠のギター少年、ジョージ・ハリソンには、この「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」がピッタリきます。

 

その生涯のドキュメンタリー映画『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』は、マーティン・スコセッシが監督を務め、ボクも公開すぐに観たのですが、”物質世界に生きて”というタイトルが謎でした。


思うにジョージがインド哲学にこだわったのは、物質世界に生きるには余りにナーヴァスで不向きだったためかも知れません。ですから映画化にあたって“スピリチュアル・ワールド”に浸っていたかったジョージには逆説的なタイトルこそ相応しいと考えて付けられたのではないか、とボクは勝手に推測しています。