1960年代は、世界中で民衆がデモによって意思表示をした時代でした。きっかけとなったのが、アメリカの人種・人権差別に対する公民権運動でした。

1955年のモンゴメリー・バス・ボイコット事件、2年後のリトル・ロック事件などにより公民権が大きなうねりとなった1963年、マルチン・ルーサー・キング牧師に先導されたワシントン大行進で歌われた連帯と勝利の歌が「We Shall Overcome」(邦題:勝利を我らに)です。

当時のニュース映像のバックにも流れています。




日本でも多くの歌い手が紹介されましたが、澄み切ったこの人の歌声が聴く者の心を揺さぶりました。

Joan Baez 1965のライブ映像です。




調べてみると、この「勝利を我らに」は、もとはバプティスト派の古い黒人教会讃美歌で「I'll Overcome Someday」というタイトルだったものを、1901年にチャールズ・アルバート・ティンドリーの作として著作権登録がされたものです。


そのオリジナル「I'll Overcome Someday」の讃歌を合唱団が歌ったものがYouTubeに上がっています。

Arrangement and Piano by Annastasia Victory
Vocals by Caroline Disnew
Hymn by Charles Albert Tindley




この「I'll…」がいつ、どんなきっかけで「We Shall…」に変わったのかは不明ですが、1940年代に織物工たちが争議で歌い、テネシー州の教師だったジルフィア・ホートンが広く紹介したそうです。

その後、ピート・シーガー(「花はどこへ行った」などで知られる)がホートンやガイ・キャラワンから教えられ、全米に歌い広めたもの。

「We Shall Overcome」と名付けられた曲の作者クレジットは、ホートン、フランク・ハミルトン、シーガー、キャラワンの共作となっています。

その一人、フォーク・ソング運動の中心的なピート・シーガーの歌唱です。




大オーケストラをバックに歌っているのはダイアナ・ロス。1996年のバプテスト派のコンサートです。「Someday We'll All Be Free」をヴァースに歌っています。




次はBruce Springsteen たちがオスロで歌っています。それは2011年7月にオスロで起きた爆弾テロで亡くなった77名への追悼の意思表示です。ノルウェイがNATO加盟によりアフガンを攻撃したことへの報復テロだといわれています。わが国も集団的自衛権を行使することによって、同様のテロが起こる可能性も否定できませんよね。




最後は、黒人霊歌といえばこの人、マヘリア・ジャクソンのライヴ映像です。1960年代ですが、詳しい年月は不明です。歌のパワーに畏敬します。




この夏の国会前の若者たちのデモの様子をみていて、思い出す歌が「勝利を我らに」だったのです。

時代は変わって、この歌は国会前デモでは歌われておりませんが、彼らのラップ調シュプレヒコールを聴いていて、この歌と低通する不屈のスピリットを感じるのです。