原題の意味は「調子はずれ」。アントニオ・カルロス・ジョビンが、ニュートン・メンドーサの詞によって作曲したボサノヴァ・ナンバーで、後に代表曲となった1つ。

作られたのは1958年ごろで、出版は翌年。その数年後の1962年に録音されたこのアルバムがヒットして、翌年以降のボサノヴァの世界的流行につながったとされています。

そのレコード・ヴァージョンはYouTubeにも上っていますが、ここではスタン・ゲッツ&チャーリー・バードが1962年にテレビ出演(?)時に演奏したモノクロ動画を。このC.バードのギターがすごい!ことになっています。




次にお馴染みの歌もの、ゲッツ/ジルベルトの「デザフィナード」です。スタン・ゲッツを起用したのは、当時のヴァーヴ・レコードのプロデュサーで、後にCTIレーベルで世界を席巻するクリード・テイラーですが、ジョビンの自伝には、ジルベルトがこのサックス奏者が気に入らないと告白していることが書かれていました。

ジョアン・ジルベルトとしては、「イパネマの娘」の録音で自分がポルトガル語で歌った箇所(1番)をバッサリ削除してアストラッドの歌による英詞のシングル・ヴァージョンを編集技で作り上げたクリード・テイラーが連れてきたサックス奏者ですから、ジョアンにとっては、ゲッツまでも「テイラー憎けりゃ、ゲッツまで憎い」となったのでしょうか?(笑)

このいきさつに興味あるかたは、リンクで参照してください。
 ⇒「イパネマの娘」マイブログへのリンク

それにしても、ジョアンの歌には味わいと独特のタイム感がありますね。自論ですが、ボサノヴァはジョアン・ジルベルトの体内リズムと、ジョビンの美メロの二代要素に基づく音楽だと思います。




さて63年からのボサノヴァ・ブームには、「英語詞」が必要でした。「デザフィナード」の原ポルトガル語のタイトルの意味をそのまま英詞にしたのは、ジャズ・シンガーでボクの大好きなジョン・ヘンドリックス(ランバート、ヘンドリックス&ロスの!)が、ジェシ・キャバーノと
共作(1962年)。英語で「ちょっと調子はずれ」を意味する「Slightly Out Of Tune」というタイトルで、多くの録音、演奏が残っています。

代表選手、エラ・フィッツジェラルドの1963年スウェーデンでのTV番組の動画です。素晴らしいです。




次は、早くからジョビン~ボサノヴァに着目していたフランク・シナトラが、アントニオ・カルロス・ジョビンとデュエット(交互に歌っている)「デザフィナード」です。




「恋はボサノバ」でお馴染みのイーディ・ゴーメもさわやかに英語詞で歌っています。




英語詞が続くとボサノヴァがダレるとお思いのかたに。ボクの好きなナラ・レオンで。ポルトガル語でヴァースから歌っています。




珍しやスティーヴィ・ワンダーとジルベルト・ジルの即興的なスキャット合戦。スゴイ動画です。YouTube恐るべし。こんなんあるんですから・・・。




最後はボサノヴァの二人の立役者、ジョアン・ジルベルト&アントニオ・カルロス・ジョビンのライヴ映像です。




ボサノヴァの(文字通り)新しい波に乗って、ブラジルの音楽家たちは世界進出を果たしました。周縁音楽のメインストリーム化とでもいいましょうか。


最近、ボクが秘かに期待しているのは、アメリカとの国交を回復したキューバがこれから世界の音楽を吸収して新しい音楽家を生み出してくれるのではないか、ということです。

かつてブームにすらなった、『ブエナヴィスタ・ソーシャルクラブ』から20年近く。あの時の老音楽たちは一部を除いて鬼籍に入ってしまいましたが、その後の新世代が新しい音楽を生み出してくれるのを楽しみにしています。

なにしろキューバはリズムの宝庫なのですから。


P.S.この曲にリクエストいただいたDupinさん、ありがとうございます。