ビートルズのアルバム『サージャント・ペッパーズ・ロンリー・ハート・クラブ・バンド』(1967年)は、ポピュラー音楽界初のコンセプト・アルバムとしても高い評価を得ました。
それまでのポピュラー音楽のアルバムは、ほとんどが単曲を集めてA面とB面をそれぞれ5~6曲づつで構成していたものでしたが、A-1のオープニングからB面ラストまでを1つの流れとして捉え、斬新な音楽世界を展開したことにボクは深く感銘。思いっきりハマりました。
もちろんそれぞれの曲の出来栄えも素晴らしいものでした。この「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ」(と以下略します)はオープニングのまさに“バンドのショウが始まるよ!”的なアルバムタイトル曲が終わると同時に間髪を入れず(曲間の余白なく)始まる2曲目のナンバー。
ボクは最初に聴いたときに、昔のスタンダート曲のカヴァーかと思ったくらいシンプルで、しかも歌詞が心に響きました。♪ミファソ・ソファミ・レミファファ・・・とメロはシンプルで、こんな歌い出しです。
What would you think if I sang out of tune
Would you stand up and walk out on me?
Lend me your ears and I'll sing you a song
And I'll try not to sing out of key
Oh I get by with a little help from my friends
Mm I get high with a little help from my friends
Mm gonna try with a little help from my friends
この心優しい「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ」も多くのカヴァーを生みましたが、まずはご本家です。
ビートルズ
このヴォーカルは、リードをリンゴ・スターがとっています。この人が歌うナンバーは、どの曲もカントリー色が感じられますね。「アクト・ナチュラリー」なんかモロそうですから。
リンゴの歌は、ビートルズの音楽世界をより多彩にした影の功労者だとボクは思っています。
さて、ビートルズのカントリー系のシンプルな歌唱に一念発起したのでしょうか、原曲とは正反対の圧倒的なパフォーマンスと歌唱で世界のドギモを抜いたのがジョー・コッカー。この曲をソウルフルに歌う手法を開発したのか、1969年8月に行われたウッドストック・ミュージック・アンド・アート・フェスティヴァルでの彼の歌唱のインパクトは衝撃でした。
それは同フェスのドキュメンタリー映像を記録した映画作品のなかでもとりわけ強力なインパクトがありました。YouTubeの映像ですが、オリジナルに比べてあまり鮮明でないのが残念ですが、イメージだけでも。
ウッドストックのジョー・コッカー
もう一つ別のジョー・コッカーの熱唱ライヴ映像です。Mad Dogs and English Menのツアーのもので、なんといってもLeon Russellがクールでカッコいい!それにRita Coolidgeはまだバック・コーラスの一員だった時代。1970年フィルモア・イーストでのライヴだそうです。
ジョー・コッカーのソウルフル歌唱が影響を与えたのでしょうか。アメリカ・ハードロック界の代表選手Bon Joviもこんな風に歌っています。
カントリー、フォーク系歌唱ではこの人。ボクの大好きなジェイムス・テイラーの弾き語りです。
ジェイムス・テイラー(ライヴ)
数年前から日本でもようやく注目されたイギリスのカントリー・バンド、マムフォード・アンド・サンズのカヴァーは、カントリー系とソウルフル系のミクスチュア(笑)です。
Mumford and Sons
最後は、Paul and Ringoです。1番はリンゴ・スターがポールと一緒に歌う2009年のライヴ映像です。やっぱりシンプルなカントリー系歌唱ですね。
さてアルバム『サージャント・ペッパーズ・ロンリー・ハート・クラブ・バンド』は、ジャケットの多彩な登場人物でもお馴染みで、ジャケット写真に写っている全員が紹介されています。
わが日本代表(笑)は、福助さん。ひっそり前のほうに鎮座しておられます。
それとこのアルバムタイトルについて言及したものは皆無ですが、ボクの秘かな解釈は、1871年2月にケンタッキーで上演された初のヴォードヴィル・ショウ『シカゴから来たサージェトのすばらしいヴォードヴィル・カンパニー』(H.J.サージェント一座)からヒントを得たのではないか、というものです。
このヴォードヴィルが後のアメリカのミュージカルの源流となったわけであり、ビートルズのアルバムのコンセプトに近いのではとボクは勝手な解釈をしています。
もちろん真偽のほどは分かりませんが、だれかポールに訊いてくれませんか?