ボブ・ディランの旦那芸(失礼!)がロシアの作曲家、ラフマニノフにまで及ぶことに驚きつつ、痛感するのはポピュラー音楽の雑食性です。なんでもありどっせ、と。
それを周縁との文化的融合ということもできるでしょうが、ボクの発想は子供のころに父親に連れてもらって観た映画『サヨナラ』に飛んでいきます。
アメリカでは1957年公開とWikiにありますので、おそらく日本では翌年くらいでしょうか。マーロン・ブランドの存在感と高美以子(たか・みいこ、アメリカ生まれ2世)の
美しさが記憶に残っていますが、同時に、ドラが鳴ったりチャイナ・メロディが頻発する日本イメージへの違和感を子供心に強く感じていました。映画のタイトル文字のフォントからして中国風ですものね。
さらに♪Sayonara, Japanese Good-bye...というこの主題歌冒頭の歌詞をン十年経っても忘れないのも、きっとそのせいでしょうか(笑)。
その主題歌を作ったのは、かのアーヴィング・バーリンであることを知ったのは、数年前のこと。「ホワイト・クリスマス」など名曲を生み出している大作曲家が作ったとは意外や意外でした。
前置きが長かったですが、今日のお題は卒業・転勤シーズンに想いを馳せて「サヨナラ」です。
まずは、映画予告編。美しい(と、子供のころ思った)高美以子さんの自己紹介から始まります。なによりも、バーリン・メロディに注目、じゃなく注耳(笑)。
このころは、戦争をテーマやバックグラウンドにした映画も多く、『戦場にかける橋』も同じ1957年。そのテーマ曲「クワイ川マーチ」がミッチ・ミラー作ですから、リリカル曲として「サヨナラ」をバーリンに依頼したのかもしれませんね。
さて、映画で高美以子が「サヨナラ」を歌うシーンです。
この映画で、日本人初のアカデミー助演女優賞をもらった女優さんが登壇するシーンです。受賞者はナンシー梅木(ミヨシ・ウメキ)、プレゼンターはアンソニー・クインです(その前の紹介者は、ジャック・レモンですよね)。
もともとナンシー梅木はジャズ・シンガーとのことでしたので、探しているうちに「サヨナラ」なれど別曲を歌っている映像を見つけました。1953年の日本映画での映像ですが、曲が同じタイトルということで、お目こぼしを(笑)。
映画関連以外にもいろいろ検索しましたが、なかなかカヴァー録音がでてきません。そうするうちに、意外なお人が・・・・。
ナット・キング・コール TV出演時の動画です。
日本文化が当時のハリウッドでどのように理解されていたかを知ることができる、という点では貴重なフィルムかもしれませんね。
でも意外と、「お・も・て・な・し」とか言いながら、両手で合掌する流儀が今も。
あの所作も、映画『サヨナラ』と同じ違和感が通奏低音のように鳴り響いています。
みなさまは、いかがでしょう。