シャンソンといえば、いつしか「愛の讃歌」がその代表曲となった感があります。
ボクはこの夏、テレビで美輪明宏の歌唱を観て感銘を受け、それがきっかけになっていろんなことを思い出し、この名曲を取り上げようと思い立ちました。
まずは文句なし、エディット・ピアフ。
YouTubeには数多くの動画がありますが、この放送用録音の動画は絶品です。やはりピアフの歌唱は、絶品だと思います。この動画にはクレジットに「1949ReWorked」とあり、動画のクオリティがいいので、もしかしてリマスターかもしれません。
この歌とピアフを襲った悲劇について、今更語るのも気が重いところですが、2007年マリオン・コティヤールが演じたピアフの素晴らしさは忘れ難し。主演女優賞を受賞しました。その予告編を。
『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』( 原題:La Môme, 英題:La Vie En Rose)。英語圏では「愛の讃歌」より、「バラ色の人生」のほうが知名度が高いのでしょうか?ちょっと謎ですね。
この予告編でも「セルダン!」と絶叫する場面が出てきますが、1949年にこの曲が出版されたのと同じ年の10月28日、ピアフとの激しい恋に落ちたボクサー、マルセル・セルダンがニューヨークに向かう途中、飛行機事故で急逝します。
しかもニューヨークで公演中のピアフに会いに行くところでした。
二人は1947年、アメリカ公演中ニューヨークで知り合い、翌年セルダンはミドル級世界チャンピオンの座を獲得した矢先の悲運でした。
この悲報に接してもピアフは、「ヴェルサイユ」のステージで「愛の讃歌」を歌ったといわれています。(歌っている最中に失神したかどうか、本当のことは分かりません)
ちなみにピアフの伝記映画は、これが3本目です。ボクは2作目(1983年『恋に生きた女ピアフ』クロード・ルルーシュ監督、フランシス・レイ音楽)も観ていますが、これも結構良かった記憶があります。
原歌詞に比してずいぶん甘い表現だといわれる日本語詞(岩谷時子・訳)で日本中に広めたコーチャン。でもコーチャンといえば岩谷訳の「愛の讃歌」が極め付けです。
越路吹雪
もちろん「愛の讃歌」のカヴァー録音の数しれず。ジョニー・アリデイの絶唱や、ミレイユ・マチュウなど数多くありますが、敢えてpopfreakが選んだ1本はパトリシア・カース。このドラマティックな表現はピアフ直系ではないかと思っています。
パトリシア・カース
去年の紅白の「ヨイトマケの唄」で俄然若い世代からも“歌手として”注目を集めた美輪明宏サン。
このセリフとウタの世界を紡げる数少ないパフォーマーの一人だと思います。
記録によれば、ピアフが「愛の讃歌」を録音したのは1950年5月のことだそうです。同年のアメリカ公演で英語詞をエディ・コンスタンティーヌがつけられ、数年後ピアフも英語版を録音しています。
世界のポピュラー音楽をリードしていると自負するアメリカ音楽界って、シャンソンもボサノヴァも英語詞に翻訳しないと気が済まないのでしょうね。「ヴォラーレ」とか「スキヤキ」とか英語じゃなくてもビルボードの1位にランクされた名曲があるのにね(笑)。