前回ブログ。映画『ピクニック』の水辺のシーンに流れた「ムーングロウ」のメロディとウィリアム・ホールデンとキム・ノヴァクの二人の姿が、いつまでも心に残って消えません。それに十五日の夜は美しい満月でしたね。

いまから50年以上前の映画と音楽にこんなに心癒されるとは・・・。また月の光を愛でる人の心は、いつの時代も変わらないのでしょうか。

さて、同じ1955年にウィリアム・ホールデンは、ジェニファー・ジョーンズを相手に映画『慕情』に主演しています。舞台は香港。

岡の上での逢引のシーンが忘れられません。といっても、ボクは映画館で観る歳ではなかったのが、無念でした。その無念さをこの曲に託して英語の歌詞をカタカナで書いてもらって、歌っていました。いまにして思えば、「愛」も「恋」も分からないまま「恋は多くのすばらしいもの」などど歌ってたのですから、マセガキでした(笑)。いまも余り成長が見られませんが(汗)。

その名場面がYouTubeにあります。このチャイナ服のジェニファー・ジョーンズが素敵です。

映画のこのシーンでのセリフ“Give me your hand”。学生時代に英語の学習用として映画のテープとテキストを使っていて、“Give me your hand”を練習するのが男同士のプチ・ブームとなりましたが、残念なことにボクはいまだにこのセリフを使ったことはありません(笑)。

ちなみにエンディングの主題歌「慕情」はスタジオ・コーラスによるものです。



この曲は、映画『慕情』のためにポール・フランシス・ウェブスター作詞、サミー・フェイン作曲のコンピが作ったもので、同年のアカデミー主題歌賞を受賞しています。

うわさでは、プッチーニ『蝶々夫人』のアリア「ある晴れた日に」に似ているとのことですが、過去の原作や原曲にインスパイアされた名曲・名作も古今東西数多くあり、目くじらたてるほどのものじゃないと思います。90年代ミュージカル『レント』だって、プッチーニの『ラ・ボエーム』を下敷きにしているんですから・・。

「慕情」主題歌も格調高い美メロに歌詞の世界も素晴らしい。古き良き時代のアメリカ音楽の代表曲じゃないかぁ、といまだにボクは確信しています。この作詞・作曲コンビによる「シークレット・ラヴ」も名曲です。

この曲をミリオン・ヒットさせたのは、コーラス・グループのフォー・エイセス。映像は近年テレビ出演時のライヴですが、素晴らしい!




資料によれば、映画のサントラ用に録音されたのがこのフォー・エイセスの「慕情」だったのですが、結局映画本編では使われずに、スタジオ・コーラスによるオーソドックスな歌唱がエンディングを飾っています。でもフォー・エイセスの「慕情」がシングル盤として発売されて大ヒットしたとのことです。

もちろんこのような美メロですから、カバー録音は山ほどあります。

最初はコニー・フランシスで。




アンディ・ウィリアムスも代表ですが、YouTubeを探していたら2000年のエンゲルベルト・フンパーディングの「慕情」を見つけました。この時御歳64歳。特徴だった“暑苦しい迫力”は変わりません。うーむ、さすがトム・ジョーンズとフェロモン競争してた残り香が・・・(汗)。

エンゲルベルト・フンパーディング「慕情」



この曲を日本で広めたのは、ヴェルヴェット・ヴォイスのこの人でしょう。この声を聴くと、ボクは心温まります。

ナット・キング・コール





ところで個人的には、日本でこの曲を十八番(おはこ)にしていた武井義明さんの歌を探しましたが、見当たらず。残念なので、邦人歌手を代表してこの方に出馬してもらいました。

尾崎紀世彦




暑いころに熱い歌を聴く。これぞ夏音楽の楽しみでしょう。

今日7月17日は祇園祭りの山鉾巡行の日。例年のようにこの日を命日とするビリー・ホリデイ、ジョン・コルトレーン、それに石原裕次郎に心のなかで合掌するのを忘れることはありません。

でも、人の世は輪廻転生。この日がご命日の方あれば、一方では生誕をお祝いされたお誕生日の方もいらっしゃるはず。その方には祇園祭りのコンチキチンの音色で「おめでとうございます!」とお祝いしたいと思います。