ようやく観ました、リメイク日本版。そしてボクはすっかり吉瀬美智子のファンになってしまいました。(以下ネタバレはありません。)
$♪blowin' in the music 主演の吉瀬・阿部&ルイ・マルのご子息

観る前は、期待1/4、不安3/4でした。しかも最初のシーンで、かつてのモロー=ロネの熱い電話口の語りがそのまま日本語で再現されて、ボクはさすがに照れまくりました。正直、アチャーって感じ(汗&笑)でした。

しかも、あのマイルスの突き刺すようなスリリングなトランペットのサウンドも登場しないし・・・。

しかし、しかし、リメイク版のスリリングな展開に“音楽のことを忘れて”ボクはスクリーンにくぎ付けになりました。実にデテイルに拘った語り口で、ある意味でオリジナル・ルイ・マル版の抜け穴を見事に埋めてくれるものでした。


リメイク版・予告編



その穴埋め問題の解答は、この予告編の柄本明のコメントにあります。“誰かを愛してしまう。すると人は必ずその証をなにかの形で残す。”

うーむ。よくぞ言ってくれました。この一言の謎解きによって、ボクは積年の疑念をようやく払しょくすることができました。緒方監督、ありがとう。

ン?なにがオリジナル版の疑念なの?ということを知りたい方は、ぜひオリジナル版を観た後、リメイク版をご覧になることをお薦めします。ボクは関係者でもなんでもありませんが・・。

(リメイク版の映画を見る気はないが、どうしても教えて欲しいかたは、メールでpopfreakまでお問い合わせください。個別に「解答」をお送りします(笑)。)

なお、リメイク版にも音楽はもちろん付いていますが、さほど気になるものではありません。期待して臨むと肩すかしかもしれませんが、映画の進行に合わせた自制の効いたとても品のいいものでした。オリジナルが映画音楽の革命を果たした時代と比較するのは観る側の思い込みに過ぎない、と考えます。

いずれも監督、緒方明の力量の証明でしょう。

ほかにも感心したシーンがあります。

・途方に暮れた吉瀬美智子が、トイレで熟考するシーン。

・その後で、赤いコートを店主のくたびれたレインコートにチェンジして店を出るシーン、などなど。

残念だったのは、ボクが新宿で観た映画館の観客は、5人くらいだったこと。これじゃ日本版リメイク版を推挙して、この映画の出来栄えをゲキサンしたルイ・マルのご子息、マニュエル・マルもガッカリすることでしょうね。


リメイク版に併せてオリジナル版のニュープリント版も同時に公開されたそうです。

ニュープリント予告編、ジャンヌ・モロー、モーリス・ロネの熱いささやき入り!




ところでYouTubeを探していたら、こんな動画に出くわしました。

思わず”なんだこれ!”と叫んでしまいました。マイスルの映画録音セッション風景動画です。




ボクの知るところ、オリジナル版の録音は、マイルス・デヴィスがヨーロッパ・ツアー中の合間を縫って1957年12月4日たった1日ですべての録音を即興的に行ったはずです。

そのおかげで「モーテルのディナー」の演奏では唇の薄皮がはがれてマウスピースに詰まってしまい、
そのまま吹き続けたため出たサウンドが思わぬ奇妙な効果
を生んだこと(プロデュサー:ボリス・ヴァインのコメント)が伝説になっています。

それに当時の撮影用カメラは回すとカラカラと音(ノイズ)がしたらしい。つまり音楽の録音スタジオにカメラが入ると本番録音の妨げになるわけですから、ラッシュを見ながらの同時録音のスタジオ内にカメラが入ることは、進行上ありえないことになります。

なのにマイルスは映像を見ながら吹いている。うーん、また新たな疑念がわいてしまいました。どなたかこの映像の謎を教えていただけませんかねぇ?


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