♪blowin’ in the music ピエール・バルーの本「サ・ヴァ、サ・ヴィアン」

詩人にして外交官。ブラジルのヴィニシウス・ヂ・モライスのドキュメンタリー映画を観たことで、積年の疑問が解けました。

なかでも映画『男と女』のなかでピエール・バルーが歌う「サンバ・サラヴァ(邦題:男と女のサンバ)」は、元はヴィニシウスたちが作った「祝福のサンバ」のフランス語カヴァー・ヴァージョンでした。これはとても興味深いものがあります。

↓この楽しい曲のなかで歌いこまれる多くのブラジル音楽家たちの名前の理由がわかりました。

From The Movie 「男と女」(クロード・ルルーシュ監督、フランシス・レイ音楽)

 ⇒リンク

ちょうど数年前にピエール・バルーの自伝『サ・ヴァ、サ・ヴィアン』が日本で発売され、そのなかに「サンバ・サラヴァ」の録音の様子が描かれていました。引用すると・・・

・バルーは、若いころにリスボン(ポルトガル)を放浪して、そのまま住み着いてしまった。

・そこで知り合った音楽家シブーカによって新しいブラジル音楽家たちの音楽を知ることになります。なかでもジョアン・ジルベルトの「想いあふれて」には衝撃を受けています。

・自伝に「頭をガーンと1発殴られた気がした。この歌い方は一体なんなんだ!」「レコードの溝がほとんどなくなるまで何百回と聴いた。15歳の頃聴いたビリー・ホリディに次ぐ衝撃だった」と述懐しています。

・数年後パリに戻って音楽活動をしているうち、あるブラジル人と知り合いになり、ホームパーティに招かれたバルーは、そこでヴィニシウス(当時外交官としてパリ在住)とバーデン・パウエル(ギタリスト、音楽家)との知遇をえます。ヴィニシウスからその場で「祝福のサンバ」のフランス語ヴァージョンを作ることを勧められます。

・それからブラジルでヴィニシウスの原作の映画に出演。パリに帰る最後の晩、バーデン・パウエルたちが送別会を開いてくれたそうで、そこでバルーはフランス語版「サンバ・サラヴァ」を披露します。
明け方まで酔ったように歌ったバルーは、朝みんなの参加を得てバーデンの家で「サンバ・サラヴァ」を録音します。原詞にもあったブラジル音楽家の名前は、バルーにとって
新しい音楽(ボサノヴァ)に目覚めさせてくれた人たちへのオマージュを意味します。ヴィニシウス・ヂ・モライス、バーデン・パウエル、ドリヴァル・カイミ、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、カルロス・リラ・・・・たちへの。

・その持ち帰ったテープをパリで映画『男と女』を撮影中の監督クロード・ルルーシュに聴かせたところ監督は“聴くやいなや飛び上がって喜び、シナリオを変えて、この曲を映画に入れること”にしたという。もちろんバルーも重要な役割で映画に出演しています。

時代のエネルギーとは、こういうことをいうのでしょうか。あまりに偶然が重なっています。

では、ヴィニシウスたちのオリジナル「祝福のサンバ(SAMBA DA BANCAO)」を聴いてみて下さい。

Vinicius de Moraes-Samba da Bencao

 ⇒リンク

ピエール・バルーが創設し、40年以上も存続しているレコード会社が『サラヴァ』。

バルー自身のアルバムはそんなに多くありませんが、後日日本で録音したアルバム『ル・ポレン』収録の時の逸話です。

“スタジオに入ったら私を待っていたのは才能ある素晴らしいアーティストたちだった。高橋幸宏に「自分のソロ・アルバムに『サラヴァ』というタイトルをつけた」、といわれて驚いた。そして「そうなんだ。僕らはずっとあなたのことが好きだったのですよ」といわれ、胸が熱くなった。”と述べています。

Saravah! Yukihiro Takahashi


 ⇒リンク

やはり次は映画『男と女』の音楽について。バルーの本を参考にして・・・。