前回ブログでご紹介したように、ボサ・ノヴァ第一号曲「想いあふれて」の創唱者は、ジョアン・ジルベルトではなく、エリゼッチ・カルドーゾでした。

実は、映画『黒いオルフェ』(1958年製作)の主題歌「カーニヴァルの朝」を映画のために録音したのもエリゼッチだったことが、1977年の来日したときの
インタビューで明らかになりました。
♪blowin’ in the music 左:『黒いオルフェ』サントラ、右:1999年『オルフェ』(カエターノ・ヴェローゾが音楽を担当)サントラ

サントラに収録されているこの歌声↓です。1番がハミング、2番で歌唱。2分55秒サイズをサントラCDで確認できます。ただしCDの解説書には歌唱者のクレジットはありません。

ライナーノーツには、「(ユリディス・ヴァージョンは)実際の映画には用いられなかった曲で、ユリディスが歌う、女性版の「オルフェの歌」。ハミング・スキャットが印象的である。」とだけ記されていたので、ボクは長い間この素晴らしい歌手が誰なのかを知らずにいたのです。
お聴きください。これがエリゼッチ・カルドーゾの歌唱です。

映画『黒いオルフェ』予告編 2:55 (アストラッド・ジルベルトのクレジットがありますがミスです)

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そのことを知ることができたのは、たまたま買っていた本『ラテン音楽名曲名演ベスト100』(竹村淳・著1999年講談社刊)を読んだためでした。

こんなビックリ記述がありました。以下、引用させていただきます。

・ビックリその1:映画『黒いオルフェ』は、当時ブラジルでは公開されなかったと、エリゼッチは竹村さんに答えています。

その理由は、リオの貧困地区ファヴェーラを舞台にしているためだそうです。したがってエリゼッチ・カルドーゾは、映画のために歌ったのに肝心のその映画を観ることができませんでした。

・ビックリその2:そこで日本のスタッフが映画『黒いオフフェ』のビデオを用意してくれて、エリゼッチはようやく映画を観ることができたそうです。しかし自分の歌った「カーニヴァルの朝」が収録されていないことに、落胆したとのこと。その時すでに、映画のために録音してから(来日時まで)20年近くが経過していました。

しかし、ボクたちはサントラ・アルバムでエリゼッチが歌っているとは知らずに、エリゼッチの「カーニヴァルの朝」をさんざん聴いていたことになります。

ところでそのエリゼッチさんも1990年に亡くなりました。

ルイス・ボンファと一緒にエリゼッチが「カーニヴァルの朝」を歌っている映像がYouTubeにありました。聴いてみてください。

Luiz Bonfa & Elizeth Cardoso

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ちなみに映画『黒いオルフェ』の音楽は、ヴィニシウス・ヂ・モライスの協力な推薦で当時無名の音楽家、アントニオ・カルロス・ジョビンが担当しました。

ただし、主題曲「カーニヴァルの朝」(下記注※参照)は、超絶技巧のギタリスト、ルイス・ボンファが作曲したものです。念のため。

ペリー・コモ・ショウにルイス・ボンファが出演して、ギター・テクを披露している映像がありました。すごいです。

この映像の最後に、ルイスのギターを伴奏にしてペリー・コモの心温まる歌で「カーニヴァルの朝」が聴けます。この歌唱も素晴らしい!

Perry Como Show in 1963 Guest: Luiz Bonfa
2 Notes Samba- Ternderly - Manha de Carnaval(Perry sings)


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ブラジル音楽に関してボクがブログに参考にしたのは、次のような本(左:竹村本、右;ジョビン自伝)です。本当に面白いネタが満載で、興味がつきません。

♪blowin’ in the music ブラジル音楽の関係書

(※注記・一時期のCDや本には「カーニヴァルの朝」と日本語タイトル表記せずに「黒いオルフェ」としたものが多くありました。サントラCDだってそうなっていました。このブログでは正確を期すために"Manha de Canaval"をすべて「カーニヴァルの朝」と表記しました。)

ヴィニシウス~ジョアン・ジルベルト~ジョビンとくれば、次は「祝福のサンバ」ははずせませんね。

名画『男と女』で「サンバ・サラヴァ」というタイトルでピエール・バルーが歌いました。次回は、これを・・。