投資家やエコノミストは中国の金融改革の進捗状況を
つぶさに追いかけるかもしれないが
中国政府は長期的な視点に立っている。
中国の市場と経済はいずれ開放されるだろう。
従って、問題は人民元が今年
国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用されるか
あるいは中国の株式市場がいつ、主要なグローバル指数に加わるか、ではない。
これらは近い将来実現する。
問題は、中国に大量の投資資金が流入し
今後数年にわたって人民元の需要が増加した場合
長期的にはどのような影響があるのか、ということだ。
投資の世界では現在、人民元建て資産の組み入れ率が非常に低い。
英銀行大手スタンダード・チャータードによると
世界各国の中央銀行や政府系ファンド(SWF)の人民元建て資産への投資額は
推定で700億~1200億ドル(約8兆4500億~14兆5000億円)で
世界の準備高の0.6~1%を占めるにすぎない。
中国人民銀行(中央銀行)によると
中国の株式市場における外国人の保有比率は1.2%
債券市場では2.3%にとどまっている。
中国の経済と資本市場の規模から考えると
上記のシェアはごくわずかと言える。
中国は世界の経済生産の12%を占める世界第2位の経済大国だ。
オンショア(本土)の債券市場の規模は
米国、日本、フランスに次ぐ世界4位。
国際取引所連合(WFE)によると、株式市場の時価総額は
世界全体の12%を占め、米国に次いで世界2位となっている。
スタンダード・チャータードによると
今年の中国株式・債券への対内投資は5000億~7000億元の買い越しとなる見込み。
人民元がSDRにいつ採用されたとしても
外国人投資家が中国の資産を購入しなければならないわけではないが
人民元はある種のお墨付きを与えられることになり
外国人による中国投資は促進されるだろう。
スタンダード・チャータードのアナリストの予測では
人民元が今年、SDRに採用されれば
2020年までの中国株式・債券への対内投資は累計で
5兆5000億~6兆2000億元の買い越しとなる可能性がある。
採用が20年まで先送りされたとしても
今後5年間の買い越し額は3兆9000億~4兆5000億元に達する可能性があるという。
いずれにしても、アナリストが予測する傾向ははっきりしている。
それは、人民元建て債券の外国人保有額が今後4年以内に
外国人が現在、中国以外の新興国に保有する債券の額を超える、ということだ。
スタンダード・チャータードは今後10年間にわたり
国際分散投資において人民元建て資産の割合が一貫して上昇すると予想している。