さて、今日の献立を考えてるうちに私のことを簡単に話しておこうか。
私は神奈川の小さな町で育った、小さい時は素直であまり人見知りしない性格だっららしいが「何にも考えてなかったんじゃない?(笑)」と両親はいう。保育園から小学低学年まで一部の男子が取り合ったほどなどモテモテだったらしい。そんな少女は友達の影響でアニメやマンガ大好きオタクへと変貌を遂げ20代後半になった現在でもキャラクターや声優にウハウハライフだ。
 
ピンポーン
 
「・・・はい」
『宅急便です』
 
人がやっと今日の夕飯を肉じゃがに決めて買い物に繰り出すため靴を履いたところだったのにドア一枚向こうにクロネコなんちゃらが立ちはだかっている、仕方なくたった今履いた靴を脱ぎ捨てハンコを取りにリビングに舞い戻った。
 
「ありがとうございました~」
 
どうやら届いたのは米らしい、結婚してから実家から送られてくる、毎月の食費が最低でも1000円以上浮くので大いに助かっている、ありがたやありがたや。そして、米をキッチンにひきずりハンコを仕舞いやっとまた靴に履き替えたところで残念なことに気づく。
 
「あ、鍵忘れた」
 
 
 
 
「それでさ、肉じゃがの材料買ってやっと帰ってきたと思ったら肉買い忘れててさ」
「じゃが買って肉忘れるとかwww」
 
旦那は帰ってきたらまず風呂で仕事の疲れと汚れを洗い流してから夕食に入る、正直夕飯から片付けてほしいが養ってもらっている手前あまり強くは言えない。
 
「あ、そういえば今度買う新作ゲームに見たことある名前の声優さんの名前あったよ」
「おう、とうとう一ちゃんもこっちの世界に「違うわ」
 
さて、こんなガチオタとひょろひょろ男が結婚までたどり着いてしまった経緯も少し話しておこうか。
 
 
 
「んじゃ、もう寝るね」
 
コタツでしこたま寝た後、旦那の一(はじめ)は寝室へとのろのろ移動を始めた。
 
「まだ22時前じゃん」
「だって疲れちゃったんだもん」
 
私の頬に軽いキスをして旦那はリビングから退出した。
一人残された私はパソコンを起動し動画サイトでお気に入りのゲーム実況を観つつスマホでゲームアプリを起動した。
 
「さて、明日の夕飯は肉かな・・・」
 
なんとなく呟いた独り言も実況の音声に掻き消えた。
 
 
 
妄想チルドレン~第1話、妄想の始まり~
 
 
 
私、里衣(りい)が旦那の元に嫁いだのは10ヶ月ほど前のこと、交際して5年目の私の誕生日祝いにプロポーズを受けた。元々決めていたのか、もしくは私がその年に「今年で私の女の価値は無くなるから死ぬかも」と病んでた私がボソッと呟いたのが原因なのか、それは彼のみぞ知るところだ。
奇跡的に彼も彼の両親もだまくらかした私は暖かく迎えられてとりあえずマンションの一室を借りて彼と新婚生活をそれなりに満喫中。
 
 
 
『6:00になりました、ニュースをお伝えします』
 
私の朝はタイマーセットで一人でに付くテレビの音声で目覚める、本当だったらあと30分は寝られるのに旦那の設定時間で起こされる、しかし残念なことに本人はセット時間に起きるわけでは無く、スマホのアラームで本当に起きるという正直意味があるのか疑問なタイマーセットに起こされる毎日。同居してからこの調子なので慣れたもので。
私は自分のセットしたアラームが鳴ってから起き、旦那のために弁当を作り始める、作るといっても面倒くさがりな私は前日夜に作ってしまうのでほとんど詰めるだけである。
 
「おはよー・・・」
「おはよー」
 
だいたい弁当の準備ができたころ旦那が起きてくる、我が家の朝ごはんは買ってきたパンを勝手に食べるスタイルなのでだいぶ助かっております。
 
「今日も残業かね」
「んー、たぶん」
 
健康食品やサプリメントの製造会社に努めてる旦那の仕事は今の時期注文が多めらしく最近よく残業してくる、忙しいことは有難いこと。
 
「夕飯何か食べたいものある?」
「ハンバーグ食べたい」
「最近食ったばっかだべ、あと2週間は我慢しな」
「ちぇ」
 
玄関で見送ることは私の決まり事、そして彼の決まり事は出かける前に必ずハグしお互いの頬にキスすること、私が拒否しても強制的にしてくるしするはめになる。
 
「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい、気いつけや~」
 
旦那を見送った後特に出かける用事がなければもうひと眠りする、それが私のスタイル。
そして、コタツで寝て気づけば昼間近になっていて急いで洗濯物を干すことになってることは旦那にはナイショである。
 
 
 

鬼の子については母親から聞いたことがあったし、テレビでもよく取り上げられる話題だった。今年になって急激な新展開があり、世間は10数年ぶりの盛り上がりを見せていた。

まず、鬼の子支援団体会長が亡くなったとの報道の後、半日と経たず新会長がファーストオーガになったことだ。ファーストオーガとは文字通り“最初の鬼の子”のことで、世界で最初に確認された鬼の子だ。おそらく今年で20才であろう若さで新会長の座に君臨した、顔も本名も不明な人物に世の中は賛否両論の嵐だ

もう一点、早くて今日4月1日から鬼の子が一般の教育機関(小・中・高等学校)で教育を受けることになったことだ。今まで鬼の子は保護施設で教育を受けていたらしいとの報道はあったが詳細ははっきりしていなかった。先ほど剣太が観ていたニュースによると、「先代は長らく過保護過ぎた」と新会長は言っているらしくカッチリ管理保護されていた鬼の子に普通の生活、

教育をさせようとのことだ。それにも賛成反対と今日まで色々な番組で討論されており、「差別」「イジメ」といった問題について心配されている。

 

「・・・まあ、とりあえずまだ関係ないか」

 

一人呟いたものの、少しでも鬼の子についての知識を身につけたいと考える剣太にとっては溜息を吐かずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

「おはよー」

「なんだまたお前と同じクラスかよ~」

 

クラス替えの張り紙に従って剣太は2-Aクラスに移動すると自分の席に腰かけた。周りは同じクラスになった喜びや新たなクラスメートとの挨拶に盛り上がっていた。知ってる者がいないか教室を見回していたところ、目の前に3人の女生徒が立った。

 

「百瀬剣太よね?」

「あ、坪根さん・・・」

 

剣太と前のクラスが一緒だった坪根妃芽(つぼね ひめ)、整った顔立ちにウェーブがかったロングヘアー、スタイル抜群で成績優秀、医者を父に持ち金持ちで聞いたままのお嬢様。その上性格は「自分が注目されていないと気が済まない」といった感じで、剣太にとっては一番関わりづらい人物だ。ちなみにその後ろの女生徒はいわゆる“お付きの人”。

 

「男子で前のクラスだったの貴方だけだから一応礼儀として挨拶しておくわ、だからって変な意識持たないことね」

「う、うん・・・またよろしくね」

 

気持ち睨みながら去っていった彼女らを見送りながら剣太はこれからの1年すでに不安で冷や汗をかいた。