忙しい時間の中で芽生える新たな出会いと別れ。
もう一度あの日に戻れるなら何をしようか、残してきたものを今でも取りに帰ろうとしてしまう。
2020年10月12日、コロナウイルスによる規制の緩和もあり、バイト仲間と飲みに出かけた。仲間といっても普段から遊びに行ったりするほどではなかった。久しぶりに会うものもいれば、仕事でしか会わないもの、僕は基本的人と話すことが得意ではないため、心を許した人以外には閉鎖的になってしまう。そのとき飲んだ相手は、唯一心を許した同期二人だった。
東京の街は思ったよりも人がいない。駅を抜け、待ち合わせの場所につく。トイレで身なりを整え、いつものようにガムを噛み、音楽を聴いてかっこつける。久しぶりだった。どこか懐かしいような、初めて会うかのような感覚だった。僕らは、他愛のない会話をしながら居酒屋に向かった。
「乾杯。」みんなの声とテンションは実に居心地がよかった。会話を楽しむ。そんな中、一人の女性が恋愛相談を始めた。僕ら二人は、円満に過ごしているものだと思っていたが、現実は違って、あまりうまくいってないみたいだ。
僕は高校一年の秋、初めて彼女に出会った。なぜだろうか、彼女は、誰とも話したことがないはずなのに、カラオケでの集まりに参加していた。「初めまして」とあいさつをして、隣の席に座った。歌は上手く、音楽の趣味があったので楽しかったことを覚えている。バイト先でもよく話しかけてくれた。でも、僕はどれほど子供だったのだろうか、そんな彼女を良く思っていない自分がいた。「バイトはバイト。」そんな風に線を引いていた僕は、彼女のラインや電話が来るたび不満が強くなっていった。あからさまに避けたりすることもあった。もっとあきれてしまうのは彼女からの連絡がなくなり、彼女に彼氏が出来た時だった。自分に自信があったのか、なぜ自分ではなくそんな男と付き合ったのか納得できなかった。矛盾。すがすがしいほどの自己中。そんな彼女が徐々に好きになってしまっていた。なぜあの時あんな態度をとったのだろう、なぜ素直になれなかったのか、そんなことを思い出していた。
「私、高一の時、あんたのこと好きだったの知ってる?」とてもいい機会だと思った。多分二人とも同じことを考えていたのだろう。思わず笑った。僕も乗じて、あの時の話をすべて話した。どこか懐かしいような、初めてのような感覚に再度浸っていた。
その時は浴びるほど酒を飲み、一部記憶があいまいの中、僕と彼女は同じ路線をたどり地元に帰る。しかし、僕が電車の揺れで気持ち悪くなり、途中にトイレに寄ったせいで僕は終電を無くした。しかし、実際はわざと降りたのだろう。ばかばかしいことはわかっていた。思い出に浸り、またあの頃の感情が芽生え始めたとでもいうのだろうか。気づいた時には彼女を抱きしめていた。最低だった。弱みに付け込んで奪ってやろうと思っていたのかもしれない。
二人とも限界だった。もはや人のいない車両で、彼女の最寄り駅まで爆睡した。しかたがないので彼女の車で始発まで待つことにした。アイスを食べて、再度昔の話をする。もう酔っぱらっていたので判断が出来なかった。「別れたらすぐに奪いに行く」なんて、かっこつけた臭いセリフを言ったりもした。そして、何事もなく朝まで寝た。お互い学校があったが、その日は休んで家で寝た。今思うと、この日がすべての始まりである。
ポンタ