彼は、何も もの言わず
ただ ひたすらに それを 立てる為の
たった1本の 真っ直ぐで、強い 棒を
瓦礫の山の中から 一生懸命に探していた。
たとえ たった ひとつでも
そこに
立てるために。
たとえ たった ひとりでも
そこで
立っているんだぞと
せめて そう 子供たちへ 伝えるかのように
仲間が既に 去ってしまった後も 彼は・・・
ただ ひたすらに 瓦礫から 離れようとは しなかった。
流されて来た 鯉のぼりは
ドロドロで、 ボロボロだ。
それでも せめて、
せめて 願いは… そう あって欲しいと
凛として 立てる日が
また 巡り来るまで。
ようやく 強く 大きな
そして 真っ直ぐな棒を 見つけた彼は
もう、倒れないように
堅くなに それを 結んだ。
何度も、 何度も 結んだ。
彼の目からは、 汗ではないものが
静かに 寡黙に 光っていた。
何度も、何度も 結んでは
もう、 倒れないように
もう、 流されないように
風に なびくことはあっても
風にさえ、 流されちゃいけないと
どうにか 強く 真っ直ぐであれと―― 。
まるで それは・・・・ 彼からの
もの言わぬ メッセージ。
黒く 淀んだ 瓦礫の上に
凛とした しなやかな 風が 吹いていた
被災地の 5月5日の こどもの日―― 。
2011.5.5
◆ひとりの自衛隊員が立てた『鯉のぼり』…