税理士である自分にとって、社長の考え方は、全く晴天の霹靂でした。損益計算書は結果としてできあがってくるものだと思っていたからです。必要な利益から考える経営方法は、損益分岐点分析とも言われるものですが、実務ではこうやって使うのだと実感しました。

 社長との一連の会話を読んでいただくとおわかりかと思いますが、逆算をして経営をしていくためには、損益計算書のあらゆる数字をみて、そして、それを理解していかないといけません。

 経費には何があるのか?借入金の年間返済額はいくらなのか?粗利益率は何%か?等々、それぞれを理解し、逆算していくことで、自社の事業構造もしくは利益構造がわかってくるのです。そして、最低限やらなければならない売上高も算定できます。

経営者は、まず、この1つ1つを洗うことから始めるべきなのです。そして、自社の利益がどのように出ているのかをしっかりと掴むことが必要なのです。

 つまり、事業発展計画書を作ろうと思ったときに、まず、最初にしなければならないこと、それは、この逆算です。そして、逆算することにより、自社の事業構造もしくは利益構造を理解する。

経営は、ただ、やみくもに売上高だけを追うのではなく、自社にとって最低限必要な売上高を算定し実行していく。ちなみに、この必要売上高は、経営者が思っているよりもはるかに多くなるのです。
私は、まだ自分がコンサルティングを始めようと思っていた頃、私どものお客様で最も利益を上げている企業の社長から、この「逆算の意味」を教えていただきました。

「先生、先生は税理士だから損益計算書の事は、知っているよね。損益計算書は、普通、売上から作っていくでしょ。でも、僕は売上から作っていないんだよ。」私は、正直、「この社長、訳のわからない事言うな。」と思っていました。私が「では、何から損益計算書を作るのですか?」と聞くと、社長は「逆算してつくっていくんだよ。」と言われました。

「社長、損益計算書は売上からはいって、最後に利益が載ります。逆算は変ですよね?」と言うと、「先生は、コンサルタントになりたいって言ったよな。なら、この原理がわからないと経営なんて教えられんぞ。会社には、最低限やらなければならない売上がある。それを経営者が知らずして、どうやって経営をしていくの?損益計算書は結果で作るものじゃない。期の始めにできているものだ。それをどうやって作るかというと、逆算して作るんだ。」

そして、社長は、紙を持ってきて、下から利益を書きました。私が、社長に「この利益はどうやって決めるのですか?」と聞くと、「俺がこれだけは出さなあかんと思っている利益や。理論も何もない。何でも出発点が必要やろ。その出発点がこれや。」

その後、「年間で返さなあかん借入金の金額を入れる。そして、固定費を入れる。そして、今の粗利益率を割り戻せば、必要な売上高が出るでしょう。」

なるほどと思いました。これが逆算の意味なのだと。そして、「この売上を達成するためにはどうするかを考えていく。ここからが戦略と言われるものなんじゃないか?」と社長は仰いました。