お婆ちゃんが亡くなった
小学2年生くらいのときだった
お婆ちゃん子だった ボクは 棺につかまりながら 号泣していた
その姿を見た 母が 男の子は どんなときも 泣かない と諭された
以来 どんなことがあっても 人前で 涙を見せまい 泣くまい と 子供心に誓った
10歳のときに 子供を 置いて 蒸発した その父が 危篤と聞かされ 30数年ぶりに会い 死の間際に立ち会い 葬儀も行なったが 涙は 出なかった
母は苦労して 子供たちを 育て上げ 83歳で亡くなり 喪主を務めたが やはり 涙は出なかった
妹から 血も涙もない兄貴 と言われ嫌われた
自分では もうすでに涙は 枯れてしまっていると思っていた
先週 30年以上前の職場の上司が危篤と知らされ 病院へ
ベットの前に立ち手を握り話しかけると 握り返して 虚ろな目で ボクを 見つめ返す
言葉にならないが 話しかけてくる
1日目は そんな感じだった
2日目になると 手を握り返す力が弱くなり 目を追うことも 辛そうだ
3日目は 手を握り返すこともなく 話し声に 目を追うこともなくなった
病室でいるとき 痰がからんで苦しんでいるのを見て 心の中でもう我慢しなくていいよ よく頑張ったね
という自分と 1分でも1秒、生きていて欲しい と願っている自分がいる
俺は 偽善者か
6日目は 所用があって病院へ行けず
携帯の着信で 見ると 上司の奥様からの電話とわかった
電話に出る前に 大きなため息をつき 亡くなったかと
そう思ったら 涙が溢れでで 止まらない
7日目に 奥様から 昨日息を引き取った 連絡を受た
携帯を切った後も 涙は 止まらない
上司とは ボクが32歳から35歳まで一緒に仕事をした
30年以上も前のことだ
素晴らしい人で 部下の一人一人の個性を見出し 引き延ばしてくれた
なによりも 信用してくれた この上司なら 死んでもいいとすら思ったほどである
職場は 離れても お付き合いが続き ボクに とって 一回り上の兄であり 父親的存在だ
9月1日の葬儀では 泣くまいと思うが・・・。
