今日から兵庫県立美術館ではじまりました。
県美プレミアム『Out of Real 「リアル」からの創造/脱却』
*会場内の写真は特別の許可を得て撮影しています。
県立美術館では9000点を超える収蔵作品を、1年を3期に区切って、テーマを設けて紹介しています。2017年度第一期のテーマは「リアル」
そう、最近よく耳にする「リア充」の「リアル」です(例えが・・・失礼)
第一章「繋・関 ~Connect/Relate~」
世界に対して自身の身体感覚や意識を繋げ、関わらせることで表現する作品が並びます。
↓田中敦子「素描」
田中敦子は「科学が発達して、火星に行こうかという時代、そこに共存できるような芸術をしたい」と語ったとか。円と線をつなぎ関わらせて宇宙のように創っていくというのが、彼女の芸術表現だそうです。
円と線の組み合わせは電子回路のようにも見えますよね・・・星と軌道のようにも見えます。
手前にある立体。3つの点で支えられ、絶妙なバランスで立っています。なんだか不思議・・・
第2章 変・語 ~Change/Narrate
↓ダイン、ジム 「植物が扇風機になる」1973-74 アルミニウム
第3章 転・現 ~Reverse/Appear
↓手前の豚さん
吉村益信 「豚・pig・lib」1971年 豚の剥製・プラスティック・ワックス・木
ハム会社のポスターをもとに作られました。
かわいい顔していますが、下半身がハム。しかも「剥製」と書かれていて一瞬ギョッとしました。
タイトルにある「lib」、お肉の「リブ」とこの作品が作られた70年代流行した思想「ウーマンズリブ(1960年代後半にアメリカで始まった女性解放運動)」の「リブ」をかけているそうです。
なるほど~思想も反映されているのですね・・・それにしても尖がった表現だ・・・
↓澤田知子「ID400」1998年 ゼラチンシルバープリント
一つとして同じものはない。すべてが作家本人であり、逆に言えば本人ではないのかもしれない。
アイデンティティーとは何なのか。顔?髪型?外見?名前?性格? 変化させても飾っても取り繕ってもその人本人だとわかるもの。あなたがあなたであるその根拠はどこにあるのかしら。などと、考えてしまいました。
第4章 虚・成 ~Void/Compose
「もの」を表現する造形表現にとって「虚空」を表現することは禅問答のような永遠のテーマ。光や影といった事象を形として成立せしめる論理や哲学を追求した作品たちです。
↓奥右作品
高松次郎「影(#394)」 1974~75 油彩・布
どこから映し出しているのだろうかと、機材を探してしまいました。それほどリアルに「影」が描かれています。でも影ってなに?そこにあるけれど、見えるけれど、存在しているのだろうけれど、でも、つかめないし保存することもできない。この「影」という存在は「リアル」だけど「リアル」じゃない?ん??頭の中のメビウスの輪を思考が巡ります。
第5章 生・実 ~Life/Work
第6章 望・迫 Anticipate/Urge
遠くを望む、近くに迫る・・・
40作家の40作品が並びます(圧巻です)
日本を代表する洋画家や郷土作家、、貴重な作品も含まれています。
左)津高和一 「響」1956年 油彩・布
津高和一は1911年西宮生まれ。阪神淡路大震災で亡くなりました。
文学から美術の世界に入ったゆえに、書道のような表現。
目に見えない聴覚的な「響」というものを、カリグラフィック的(文字を美しく見せる見せるための手法をカリグラフィーという)に表現することで、実際にそこにあるかのように、音や響きが造形的に迫ってくる・・・とのことですが
私は、書かれている黒い線がメロディーにのって踊っているように見えました。左側はもしかしたら「響」という文字を崩したのかなあなどと、想像(妄想)を膨らませました。
今回の県美プレミアム、これまでで一番面白かったです。
芸術は、作家の心を写すと同時に、見ている側の心も反映するということを改めて感じました。作品を観ていながら、実は、自分の心の奥底と会話する、そんな不思議な感じがしました。
感じ方や解釈は十人十色、自由でいいと思います。
でも、面白いものは面白い、不思議なものは不思議、そして、素敵なものは素敵なのです。
県美プレミアム『Out of Real 「リアル」からの創造/脱却』
兵庫県立美術館で6月25日まで開催です。