妻の病気の予後は絶望的であった。
医学用語には不可解な表現をする場合があり、
医師は余命と伝えたつもりが患者は回復までの時間と捉えるような場合がある。
多系統萎縮症はおよそ発症から10年で全員が余命ゼロとなる死の病だ。
予後の短い病気は発症率が同じだとしても現存する患者数は少なくなる。
パーキンソン病の患者が世の中に多いのは、それは寿命まで生きられる予後の長い病気だからである。
私は当初妻の病気は宝くじが当たったような稀なる病気だと思ったがそんなことはない、そんな奇跡のような少数ではなくこの病気にかかる人は多いのだ。
ただ現在進行形である患者が少ないだけだ。
そんな分析をしたところで妻の行く末は変わらないのがやりきれない。
しかし妻の強さは一体どう理解すれば良いのか?
私が予想したように私自身が苦しんでいるにもかかわらず、妻は予後を楽しんでいるように見える。
妻自身はそれが分析できているのだろうが私には理解できない。
どうなっているんだろう。
まさか明るい未来が見えているんじゃないだろうな。
いや、ひょっとしてそうなのか?