妻が亡くなってから私は妻の病気について深く知ることになります。
妻は多系統萎縮症という難病によって命を失いました。
生存中はその病気について深く知ることは怖くて出来ませんでした。
妻の死後同じような病気の方のブログを探して読むようになりました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症(SCD)、多系統萎縮症(MSA)はいずれも良く似た症状を示す神経難病で死の病です。
体の機能が徐々に失われていくという残酷な病気です。
そのような病気の方が何人か自分の様子をブログで公開していました。
活発に動けるわけが有りませんから内容は毎日同じことの繰り返しになります。
それはその方自身の為だけの日記だったのでしょう。
窓から見える風景と訪れる人のことを毎日繰り返し書いておられました。
人の意見を求めることもなく、人に意見することもなく。
共通しているのは決して同情を得ようとしない文章であることです。
人に同情されることが自身にとって最も辛いことなのでしょう。
妻もそうでした。私に涙さえ見せたことはありませんでした。
気丈に死と対峙する、自分の運命を受け入れて毎日再確認していた日記だったのでしょう。
何人かの方の日記はある日を最後にそのまま止まってしまいました。
ある方は安楽死を望み家族はそれを受け入れ実現させて日記も終わります。
そんないくつかの日記の中にもしや妻の日記も見つかりはしないかと、
それはいつの日まで続いていたのだろうかと、
今でも探してしまうのです。