カフェではない
間違ってもそう呼ばれない喫茶店である
今風に言うと昭和の喫茶店
私より少し年配のご夫婦二人でやっている
たぶん趣味の範囲だろうと思う
いつも客の姿は無い
それがとても落ち着けるのだ
何故か?
私はまともな世界に戻ってきたとそこで実感が出来るから
ちょっと前までまともな世界に居なかった
私は父に逢いに施設へ頻繁に面会に行く
その施設の帰り道にこの喫茶店がある
父との面会の様はもうまともな世界では無い
話が通じない
父は私の話を聞き取ることが出来ない
何故なのか?
それが分からない
私の滑舌の悪さの為なのかも知れないが
以前から「話のツボがわからない」と良く言っていた
発音や表現をいろいろ変え補聴器の調子も確認するが伝わらない
私は繰り返し同じ事を言い続けるがやがて諦めてしまう
逆に父が話すことは私にはよくわかる
しかし返事を伝えようとしても父には伝わらない
一方通行であって双方向の会話というものが成立しない
私は父の世界に入り込めず苛々が爆発しそうになる
そして15分の面会時間は終了する
父を職員に引き渡すとき父の頭にクルクルパーをしてやる
職員は笑っている
いよいよ文字盤を使わないとだめなのかなあ
妻との困難だった会話が思い出されてくる
そしてこの喫茶店に寄りまともな世界に戻ってくる
ご夫婦と一言二言交わす会話がちゃんと通じることに安堵する
そしてこの日記を書いている
いつも吉田拓郎の歌が流れている