芦浜についての考察
今現役の漁師さんから見ると長島事件を起こした当時の漁師さん達は祖父になるのだろう。
長い年月に渡る戦いと、その後に積み重ねられた時間が経った訳ですが、今でも禍根は残っていると聞きます。
反対派と賛成派の住民のギクシャクした関係は孫の代なった今でも続いていると言われています。
原発計画に巻き込まれた住民には何が起こったのでしょう。
福島第1もそうですが原発立地は二つの自治体にまたがる場合が有ります。
芦浜の場合、漁業を主とする旧南島町と、漁業も有るが農業が主体の旧紀勢町の二つです。
地域コミュニティ破壊のメカニズムはこの二つの自治体の原発への姿勢の相違で始まります。
旧南島町は原発の影響を危惧し、旧紀勢町は原発の影響に期待したのです。
この基本構造が安定して継続しておればもっと早くに決着はついていたのかも知れません。
実際には安定せず地震のように揺れ動き彷徨い続けたのです。
人の心とは強くもあり弱くもあり、固くも柔らかくもあって、彷徨うものです。
二つの自治体では選挙のたびに首長や議員の姿勢が変わっていき、まだら模様のゲリラ戦の様相になっていきます。
敵は電力会社だけではなく近所の住人同士が敵になり、親戚や家族も敵になっていったのです。
疲弊しているのは漁村も農村も同じです、将来への明るい展望が描けないのは共通したことでした。
屈強だった漁師も辛抱強かった農家も電力会社からの工作資金に誘惑され飲み込まれていきます。
あきらめてしまいそうな男達を鼓舞させ立ち直らせたのは、町から村にやってきた指導者ホー・チ・ミンたる妻や嫁達でした。
冷静な判断ができた女達によって戦いは継続して行き勝利につながったのです。
そのような戦士の祖母や母を持つ現在の現役世代はどのように考えているのだろうか。
「もし、芦浜原発計画が再燃したらあなたはどうしますか?」
今となっては非現実的とも言いきれない質問をしてみると、
『諸手を挙げて歓迎しますよ』
そう答える若い人も多くなっている。
この国では戦士の息子たちが戦士に育つとは限らない。
生きていくことに必死であるのは昔も今も変わらないけれど。
本日ここまで。