小さい頃です

近所に大きなコリー犬を飼っている家があって

今ではあり得ない放し飼いをしていた

名前はテリーといった

今思うとその家にはテリーの名付け親と思える似た名前を持つ年上の子供が居た

テリーは集落の家を巡回して遊び友達を探すのが日課となっていた

私も毎日遊んでもらった

甘噛み程度のじゃれ合いから始まる遊びはやがて

取っ組み合いの喧嘩のようになり地べたを転げ回った

長い毛の中に顔を埋めると温かく野生の獣の匂いがした

手足の皮膚が傷つき血が出て怖くなり私は家の中に逃げ込んだ

血の洗礼は毎日続いていた

ある日私は猛犬テリーを連れて山に狩りに出掛けた

私の獲物はカブトムシである

谷筋に沿って水辺の石を跳び越え進んで行くとテリーが着いてこない

テリーは水に浮かぶ石が跳び越えられずに躊躇している

何度も跳ぼうとするが足が止まってしまい震えていた

意外にも猛犬テリーは水が怖かったのだ

私は進むのを諦めて来た道を引き返すことにした

猛犬テリーは私の後ろを情けなさそうに着いてきた

私はどうやらマウントを取った

それからテリーはどうなったんだっけな?

思い出せない